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聞き手  最初に来ていただいた時、北朝鮮の拉致問題を取り上げましたが、今日はもうひとかたゲストにおこしいただいています。福井県立大学の島田洋一助教授です。前回は笹木さんに政治の立場から見てどういうふうな関わりがあったのか、これまで北朝鮮とどういう交渉があったのか、裏話どうだったのかというのを伺ったんですが、今日はまず島田先生が今までどんな形で北朝鮮の拉致問題に関わってこられたのかというところからお伺いしたいんですけれども。

島田氏  福井県の場合は具体的に犠牲者がはっきり出ている県ということで、私は4年位前から本格的に関わりだしました。当初は地村さんのお父さんも浜本さんも署名運動なんかをされていましたが、なかなか関心が低くて、寒い中で署名簿を持っていても無視していく人が多い、そういう状況でした。ですから僕の立場でもできるだけのことをしたいなということでやりだしたんです。

聞き手  救う会に関わられておられたということですね。

島田氏  そうですね。だいたい運動としてはじめたのは4年位前からです。それまでも北朝鮮問題というのは関心を持って論文とかは書いていたんですけれども。

笹木  地村さんのお父さんは今、長期化は覚悟しているとか、あるいは有本さんのお母さんも自分の娘だけではなくて拉致者全員が帰国しないと意味がないんだ、国は頑張って欲しいと。非常に強いなと思うんですけれども、こういうご家族の方のご様子はどうなんですかね。昔からずっとやってこられて。

島田氏  家族の方が長期化も辞さないと、非常に立派な姿勢だと思うんですが、政府の方がそれに甘えてのんべんだらりと交渉していていいんだという発想になると困るわけです。政府の方はやはり確実に、甘いことだけを言うんではなくて、あるいは交渉しましょうというだけではなくて、やはり相手にとって痛いような、経済制裁的なことも含めて、そういう攻めるといった姿勢も必要だと思います。

聞き手  島田先生は国際政治学者のお立場でいらっしゃいますけれども、我々一般のものが見ていても北朝鮮という国は本当に特殊な国、というのが正しいのか分かりませんけれども、他の国と交渉するのとまったく異質なわけですね。

島田氏  そうですね。非常に独裁政権で、言論の自由も何もないという状況。逆をいえば独裁者さえ態度を変えれば一夜にして方針も変わるというところがあるんですけれども、やはり基本的にはブッシュ大統領がやってきたような、圧力をかけて相手が態度を改めれば経済支援もあるけれども、具体的に、言葉だけではなくて具体的に何か向こうが態度を改めることをしない限りは一切援助も出さなさないと。それが基本的にああいう政権に対してする姿勢だと思います。

聞き手  ただその中での人道上の絡みというか、やっぱり我々にしてみればご家族の方に感情移入してしまうので、何とか早く拉致被害者の方々のご家族だけでも、あるいは今死亡を伝えられているけれども分からない方々のことだけでも早く知りたい。そういう部分も絡んでしまうとやっぱり外交交渉というものはやりづらくなってしまうんでしょうか。切り離して考えなくてはいけないんですかね。

島田氏  現在帰ってきている5人の人たちの子供達をはっきり人質にとっているというとんでもない状況なんですけれども、これは世界中の誰が見たって子供を人質に取るというのは最も卑劣なやり方ですから、非常に国際世論にも訴え易いと思います。だから日本政府がそのあたり、感情的問題というよりも本当に人間としての基本を犯しているという話ですから、国際世論に訴えて、場合によっては経済制裁も日本が呼びかけてやるぞと、そのぐらいの姿勢を見せることが大事だと思います。

笹木  ちょっと前まで金正日は、8人死亡といえばそれで何とかごまかせると思っていた。それが真相を解明しろと日本の国民の世論が高まってそれでは済まなくなった。北朝鮮に会いに来て下さいと言ったのも突っぱねた。これも世論が高まったからです。ここまで非常に順調に来ているということですかね。

島田氏  とにかく家族の方達がしっかりと意思統一をしてしっかりくじけずに。あの8人死んでいると聞かされた時は本当に皆さんショックでガクッとなってもおかしくなかったんですが、ここで負けてはいけないといって団結して、それを国民も見ていて、これをバックアップしなければいけないと。やはりそういう日本国民が一致しての圧力が効いて、向こうとしても当初の思惑は外れたなということですね。

聞き手  今回何を痛切に感じたかというと国って一体なんなんだと。我々国民としてちゃんと税金納めている。国民の生命財産を守ってくれるべきはずの国がここまでルーズなことをしていたのだというふうな憤りも感じるわけです。

笹木  2、3日前にも出ていましたが、97年当時に官邸秘書官をやっていた方が、あの時に拉致被害者の認定をしようといったら、外務省と与党の一部、自民党の一部がそれは北朝鮮を刺激する、それをびびって認定さえもしなかったと出ていました。例えばノドンミサイルを能登半島沖に打ち込まれたその後にも米支援を漫然とやってきたわけです。機嫌を取れば何とかなると。それは全く逆だったわけです。結局今回北朝鮮が軟化したのはブッシュが武力を背景に攻勢に出たことと、もうひとつは北朝鮮の経済が破綻している。この2つなんです。しかし日本がやってきたのはむしろ機嫌を取って米支援をやって、しかも一兆円規模ですか、これもなんとなく経済援助するんじゃないかという流れで、北朝鮮もそれを期待している。これはむしろ逆で、甘えさせてどんどん解決を遅らさせているということです。

聞き手  冒頭に島田先生が、「北朝鮮の拉致被害の犠牲者」という言い方をお使いになりました。その犠牲者とおっしゃる裏にはひょっとすると、これは日本国家、国の犠牲になった方というような側面もあってお使いになったのかなと思います。

島田氏  拉致の実行犯というのは明らかに北朝鮮当局ですが、そのもみ消し工作には日本当局も事実上関与してきたといわざるを得ない面もあるんですよね。最初の拉致事件は77年9月に石川県から拉致されているんですが、その時には呼び出した人間なんかは逮捕しているんです。ただ結局色々な圧力があって不起訴にした。その2ヵ月後に横田めぐみさんが拉致されたんです。あのお母さんがよく言われるんですが、もしその2ヶ月前の事件というのがはっきり報道されていて、北朝鮮工作員が逮捕されたと、拉致事件があったということが分かっていれば、あんな11月の6時ごろの真っ暗な時に娘を一人で帰らせるなんてしなかったと。だからまさに日本政府の甘い対応というのが北朝鮮側をなめさせて、拉致して手引きした人間が捕まえられても日本政府は何もしない、安心していくらでもやれるっていう話になってしまったわけです。だから日本政府の責任は、政府だけではなく野党も含めてですが、非常に大きいですね。

聞き手  これから先、やらなくてはいけないことを今伺いましたが、それについての見通し、本当にそれができるんだろうか、日本政府が世論に後押しされて実際にそういう対応策というのを取れるんだろうかというその辺りのところはどうお考えになってらっしゃいますか。

島田氏  これはやはり単に話し合いというだけでは駄目で、アメリカあたりが平和的に、外交的に解決するという場合には、軍事力で先制攻撃はしないというだけの話であって、場合によっては経済政策もする。そういう鞭をきちんと用意した上で譲歩しなければ大変なことになるぞと。これがやっぱり外交です。力を背景にしないと。

笹木  経済制裁でいうと、ノドンとかが打ち込まれた後、少なくとも北朝鮮に日本国内から送金がある、それを停止するぐらいはやらないといけなかったんです。

聞き手  今、鞭の部分とおっしゃいましたが、日本は凄く不得意になってしまいましたね、戦後こっち。そういったことに関して国民の後押しが得られにくいような雰囲気もあるんですが、この辺りはどうなんでしょう。

笹木  今回はさすがにアンケートでも、北朝鮮の問題については拉致とさらに安全保障上の、例えばノドンとかテポドンとか、この問題の解決が最優先だという意見が一番多いわけです。かなり国民も変わっては来ているんだと思います。

聞き手  一番最近この被害者の家族の方にお会いになったのはいつ頃ですか。

島田氏  被害者本人には2回ぐらい会ったんですが、お父さんの方とは先週日曜日東京でお会いしました。だから4、5日前ですか。

聞き手  ご様子は如何でしたか。

島田氏  地村さん浜本さんの場合は被害者の方が帰って来れましたから、他の方に比べればまだましでしょうし、もう75歳くらいなっておられるんですが、とにかくここが正念場だから頑張るぞということで気合がますます充実しているなという感じですね。

笹木  救う会の幹事として県民に何かアピールしたいことはありますか。

島田氏  そうですね。ちょっとひとつ懼れていることは、福井の場合は犠牲者の方2人が帰ってこられて、これで子供も帰ってくると何か拉致問題がこれで解決したんだという雰囲気になりかねないということです。全国的には犠牲者、被害者がいっぱい出ているわけですし、家族会の方々みんなが協力してやってきたおかげでたまたま今回5人が帰ってこられた。だから残りの死んだとされている人たちの真相究明、それから取り返すために今後も我々は、良かったな、解決したなという気にならずに、全国的な問題だということでやっていきたいと思います。
(文責:ささき竜三事務所)