毎週ラジオ出演中

聞き手  年頭から少し楽しい話題もとは思うんですが、今日は一体どんなお話になるんでしょうか。

笹木  米ソの冷戦が終わった1989年以降、現在もアメリカのいうことだけを聞いていて日本は全てOK、大丈夫だということではなくなった。北朝鮮の話ですとか、イラクの話ですとか、すでにお話しましたけれども。

聞き手  湾岸戦争のちょっと前ぐらいですね。

笹木  そうですね。もう冷戦が終わって、アメリカが日本を守る必要がかなり少なくなった、それからということです。そこで今日のお話ですが。年末にフィリピンの大統領が日本に来て、介護の労働者、ヘルパーですとか看護士、そういう人を労働者として受け入れてくれという記事が出ていました。タイも同じように日本に対して要望してきました。


物だけでなく、人もアジアから入ってくる?

日本はそれに対してはっきりした答えをできなくて、まあ将来的には確かに介護労働者が足りなくなるので受けるといいじゃないかという人もいますし、いや国内での色々な雇用の問題もあると反対している人もいる。政府内でも賛否両論あるんですが答えてないんです。一方、今中国から安い産品がどんどん入ってくる。将来的にはインドからも。中国の人口も将来インドは抜きますから、おそらくどんどん入ってくるようになる。物がどんどん入ってきて大変という話がよくあります。物と人が日本にアジアから入ってきて、この衝撃が強いと戸惑っているわけですが、逆にそれはアジア経済の影響が、ASEANですとか中国、韓国、台湾、インドも含めて、どんどん大きくなっていくということなんです。

聞き手  そうですね。新聞を見ていても、アメリカに関する記事に目がいってしまってアジアに関する記事は見逃してしまうようなところがどこかにありますよね。

笹木  実際にはこれから世界の中で一番急成長をして、経済的においしいところはアジアになるんです。それをアメリカはわかっているから、クリントンさんが5,6年前、中国に行った時には、1千人以上の企業経営者を連れて行った。日本の総理大臣が例えば他の国に行った時に企業家を千人以上連れて行ったら、たぶん日本のメディアは叩くと思うんですが、そういうことを平気でやっている。そこまでしてアジアにアメリカの企業が入っていく、国としてもそれを援助する。


アジアが日本に求めていること

その世界的に一番おいしい地区になるアジアから、アメリカではなくて日本に求められていることがあるわけです。ひとつは97年の通貨危機、アジアの通貨危機がありました。あの頃ヘッジファンドということがよく話題になりましたが、一日に大体200兆円以上のお金を動かすことができるわけです。完全にマネーゲームです。これは一国の経済、日本だって80兆ちょっとです、一般会計でいいますと。それだけのお金が急に入ったり出たりして、一国の経済はガタガタになってしまう。それで実際、タイ・インドネシア・韓国・マレーシア、これがガタガタにされた。97年のアジアの通貨危機です。その時にマハティールさんがかなり怒ってソロスと喧嘩したりしていましたが、このとき日本はこの通貨危機を何とか回復させるために300億ドル、お金を世界で一番たくさん出したわけです。ただ、その時はお金をいっぱい出しているんですが、アジアの国からは、IMF、アメリカ・ヨーロッパ中心の国際通貨基金、これは結局あんまり救ってくれなかったし、間違いも犯して、アジアにあまり親身でなかった。それで日本に、もっと親身なアジアの通貨基金、日本も金持っているんだし、それを創ろうという動きがあったわけです。しかしこれはアメリカが、アジアでそういう通貨基金、アメリカを入れないメンバーで作られると影響力が落ちる可能性があるので邪魔をした、ということで潰れたんです。しかし、いまもその必要性はずっと続いている。


日本、アセアン、中国の三角形を

もうひとつ、今、ヨーロッパでEU、物も人もお金も共同にして、ヨーロッパが共同体、一つの大きい地区としてのまとまりを作ろうということでどんどん進んでいます。マレーシアの首相が去年これと同じようなものをアジアで、日本がもっと音頭をとって作ってくれということを小泉さんに対して言ったわけです。それは何故かというと、その前年、つまり一昨年に中国がASEANのそれぞれの国と自由貿易地域の協定、要は関税を将来的になくして、物が自由に行き来する、そういう協定をASEAN10ヶ国と作っていこうと提案したんです。今ASEAN10ヶ国の経済力全体と中国一国の経済がだいたい同じぐらいです。ASEANの国にしてみると中国はこれからどんどん大きくなりますから、もし中国と一緒になった場合には、将来アジアの国は呑みこまれてしまうと。だからそこで日本もいて、中国もいて、ASEANがあって、この3つの三角関係でうまくバランスを保ちたい。ということで、日本に音頭をとってくれといってきた。しかし、なかなかそこが日本から仕掛けていくということが非常に弱いので、小泉さんもまだ。シンガポールとだけはそういう協定をとりあえず結びましたが、ほかの国とはまだ進めていないということです。

聞き手  なるほど。ヨーロッパの連合体でユーロというお金を流通させようということがありますが、それと同じようにアジアだって同じような共通通貨を持っていいのではないかと。それを例えば円にしてもいいじゃないかと。ただそれに関しては反発のある国もありますよね。その筆頭にくるのが中国であったりするんだろうと思います。

笹木  中国もありますし、それとおそらくバブルの頃だったら、かなり可能性がありました。今、日本の経済も非常に落ちていますし、現実的に大変ですが。中国の存在というのは大きくて、ASEANとか他の国はいつも意識していて、領土的に拡張する可能性もあると思っていますから。だから日本にもう少しその力を発揮して、このアジアからの通貨ですとか、自由貿易地帯を作ろうということで、どんどん要望があるけれどもそれに対して答えられていないというのは、やはりずっと戦後アメリカのいう事に従って動いてきた癖がついていますから、アメリカがいわない事を仕掛けていく、仕組みを作っていく、アジアの中で。それが出来ていないということなんですね。

聞き手  もちろんそれは安保の枠組みの中、というのもあるんでしょうが、それ以外の事に関してもすべてアメリカの顔色を見るという。

笹木  そうなんです。ヨーロッパの場合はNATOでやはり軍事同盟をアメリカと組んでいるけれども、EUを作っているわけですから、日本だって韓国だって、アメリカと軍事同盟を結んでいてもアジアのことはアジアでやるよということを当然言っていいわけです。しかしまだそこまで動きが出ていない。こういう問題がひとつ。もうひとつ、もっと深い問題というのは、いつも日本はまだ1400兆円の貯蓄があるんだと、これは世界で冠たるお金を持っている国だという話をしていますが、このたくさんお金を持っている国というのは大昔であれば19世紀から20世紀のイギリス帝国、アメリカであれば60年代。


かつての大英帝国、1960年代のアメリカ

急に大きくなって、そういう時期にイギリスの場合は博物学、例えば世界中、アフリカの奥地にも探検家を派遣する。あの頃インド仏教について一番体系的に研究をはじめたのはイギリスです。世界中に色々な人を派遣して、文化ですとか物とか生物とか、博物学をやって、それにいっぱいお金をかけて、それがその後のイギリスの帝国主義というか世界貿易にプラスになった。アメリカは60年代にこれから宇宙開発をすると、ケネディが言って、ロケットを飛ばした。一方では病気の根絶をやると。宇宙開発がコンピュータですとかIT産業に今つながっていて、病気の根絶のプロジェクトが今バイオとかゲノムの産業につながっているわけです。お金を将来の世界の課題に投資して研究学問をおこし、それがまた自分の国の色々な新しい産業につながっていく。こういう投資をしている。これを全くしていなくて、日本は80年代に世界中の土地、不動産を買い漁ることだけに使った。

聞き手  なるほど。耳が痛いですね。イギリスで大英博物館を観る、今世界の共通語というのが何故英語になっているのかというふうなことを考えれば、なるほどと納得できます。それと同じようなものを日本が何か残せたかと、本当にないというのは辛いですね。

笹木  あの頃は「日本から日が昇る」と80年代いわれたんですが、有効な投資をできなかったということです。しかし、まだ今も1400兆円というのは世界に冠たるお金なわけですから、そういうことをやらないといけない。じゃあ日本としては何かと。


日本による戦略的投資とは

アジアの経済がこれから爆発する。インドまでを含めてですが。一番おいしい所だけれども、逆に深刻な危機というか不安もあります。ひとつは食料です。食料の自給率、70年代には6割以上あった韓国や台湾、マレーシアは今10%20%の自給率しかないんです。2025年頃には世界の栄養不足人口の6割はアジアになるといわれている。エネルギーも中国、マレーシア、インドネシアもすでに石油の輸入国になっているわけです。環境破壊もアジアが一番深刻になるだろうといわれている。だからそれに対して今からどういうふうに研究ですとか、学問を興して、どう教育していくか。ここがやっぱり投資をしていくべき、世界の課題、日本としても一番身近にやっていけることだと思うんです。

聞き手  そうですね。そこでも中国がひとつのキーになるんでしょうね。中国が作った食料がアジアを支えてきた、というところがあるんでしょうが、中国が急速に工業化していますからね

笹木  そうです。食料も石油も非常に深刻に不足していく可能性が高いわけです。インドもそうなる可能性が高い。だからそこで省エネですとかリサイクル、あるいは生活スタイル、そういうものを含めて研究していく。資源の問題、環境の問題もやっていくことが求められています。アメリカはよく環境問題をいいますが、温暖化防止条約にアメリカはあまり積極的に入ってきませんし、生物多様性条約、これもアメリカは表で言っていることとは逆に具体的な条約になると入ってこない。環境問題でアメリカはアジアに対してリーダーシップを取れないだろうと思うんです。しっかりと研究を興して、アジア全体の役にも立って、日本にとって貢献が出来る道を今からやらないともうギリギリの段階かなということですよね。

聞き手  これまでずっと笹木さんとお話してきたことと絡み合わせて考えていくと、エネルギーも足りなくなってくるという中で、今アメリカが何をしているのか、イラクに何故こういう行動を取っているのかということが全て絡み合ってくるということですね。

笹木  エネルギーとか経済戦略と絡めてイラク攻撃があるというのが事実なんです。

聞き手  なるほど。そんな中で今お話を聞いていますと、両刃の剣、ピンチとチャンスは本当に背中あわせにいるんだなということがよくわかります。よくピンチの方ばっかり日本人は気にするんですけれども、大きなチャンスですね。


農耕民族は内に蓄積する力、狩猟民族は外に侵略する力?

笹木  アジアにこちらから、受身ではなくて積極的に働きかけていけるかです。

聞き手  アメリカに頼っているうちにすごく下手くそになってしまった物、まあ元々得意ではなかったんだけれども、という物のひとつに外交というものがあるのかなというので、ひとつネックになってきますよね。

笹木  今までは、昔侵略したから日本がリーダーシップとることは反対だといわれるのではないか、とそればかり心配したんですが、もうそうではないんです。

聞き手  そうですよね。確かに謝るべきことはきっちり謝ってこれまでも来ているわけですから、全体的な流れを考えてみんなに良いことを提唱して嫌がる人というのはいないでしょうから。抵抗勢力はあるにせよ。それを考えるとこれから先、こうやってラジオを聞いていらっしゃる方ももちろん含めてですが、みんなが世界の情勢を知っていないと、海に閉ざされている国ですから、なんか海の向こうのことというのが見えないですよね。

笹木  そうですね。これは農耕民族の特徴で、幕末に西郷隆盛が農耕民族、東洋民族は内に蓄積する力、狩猟民族、ヨーロッパ人は外に浸出する力と言ったんです。そういう気質はあるんですが、もう世界中で垣根がなくなっていますから、内に蓄積しているだけでは駄目なんです。

聞き手  なるほど。今年、まだ経済的にもみたいな暗い話題もありますが、ちょっと発想を変えて外に目を向けて、明るくなれるような、チャンスになるようなものがあったら、積極的にそこに打ち出していくというのも大事かもしれませんね。
(文責:ささき竜三事務所)