聞き手 今日は介護保険ついてということなんですが、福井県は全国的に見ても高齢化が進んでいるといわれますよね。
長生きでボケないための一少三多
笹木 そうですね。平均よりも3〜4%高いんでしたか。いわゆる高齢化について。よく最近話題になるのが、高齢化してボケるとかそういう話があるわけですが、この間、専門の人と話していたら、私も、鳴尾さんも40歳でしたよね。大体40歳を超えると、頭はほおっておくとどんどん老化に向かっていくらしいです。
聞き手 そうですね。もう、忘れることのほうが多いですからね。最近は。
笹木 80歳以上だとだいたい1/4が痴呆だというんです。先日、90歳近い非常に元気な方にお聞きしたんですが、元気で長生きするためにはコツは何かというと一少三多だと。
聞き手 1つ少なくして3つ多くと。
笹木 ひとつ少なくというのは食事だそうです。なるべく腹いっぱいしないと。三多のひとつが睡眠、運動、3つ目は多接。多く接する、色々な違った分野の人と接するとか、いろいろな場所に行くとか、そういう接する分野をなるべく多くする。これも非常にいいと。痴呆について色々研究している方に聞くと、実際そうだということで、趣味や余暇、交際範囲、あるいは教えたり教わったり、旅行するとか外出するとか、いろいろなことをする人が非常にいいと。そういうのが右脳も刺激して、使っていない部分を活性化する。そんなことを言っていました。一日中寝巻きでいる、これが一番老人にとって痴呆に向かう悪い習慣だということです。
聞き手 私はまだ40代ですが、休みの日は一日中パジャマの時あります。いけないんですね、これは。
笹木 それが年を取るとまずいということです。そんな中で、ボケですとかこういう問題が非常に深刻だし、寝たきりの問題も深刻です。こういった高齢者をみんなで支えようということで介護保険が2000年から始まったわけですね。福井県でいうと、実際に介護保険が始まって介護のサービスを受けている方が21,514人なんです。受ける年代全体でいうと、65歳以上の人口が17,2000人近く。そうすると結局、一割ちょっとです。65歳以上の人口の中で考えるとですが、実際にサービスを受けている方は1割ちょっとしかいない。
聞き手 この1割ちょっとというのが多い数なのか少ない数なのかということですよね。
笹木 そうですね。しかし、その方に奥さんがいたり旦那さんがいたり、あるいはこの世代の方は平均2人以上子供がいるわけですから、息子や娘がいる。だから介護保険がないと、その配偶者とか子供とかがその分大変なわけです。そういうことで、実際に受けている方は少なくても影響力は大きいでしょうが、それにしてもこれだけの人数の為に40歳以上の方が掛け金を毎月払っていくという制度なんです。これはかなり反発が強いんではないかということで、覚えているかどうかわかりませんけれども、2000年の介護保険が始まる直前に、ちょうど選挙が2000年6月にありましたけれども、その前の秋に、一回決まったその介護保険について、やっぱり保険料は半額でいいようにしようとか、あるいは半年は取らないようにしようとか、家族で介護している人には報奨金を渡そうとか、まあ選挙前のごますりを急に秋から言い出したわけです。あの頃の政調会長が。実際、消費税でもなんでも自分たちの負担が高くなるというと反対が多いわけですが、このときには意外なことに、例えば65歳以上の掛け金の額が3,000円位といわれていたんですが、この額でも、もっと多くなって5,000円ぐらいでも、倍ぐらいになっても、ちゃんと老後の不安がなくなるような制度になっていくのなら、それはもう仕方がないという判断がすごく多かった。
聞き手 世の中の人たちは、もう払うものは払うからと。この制度は必要なんだからと。きっちり充実させてくれと。
この春から、介護保険見直し
笹木 意外な反応、今言ったご機嫌取ろうとした人にとっては意外な反応だったわけです。何故それだけ意外な反応だったかというと、介護地獄とかいう言葉がよくありましたよね。例えば夫婦共に70歳代で、奥さんが旦那さんを介護している。もう疲れてしまって、その旦那さんを絞め殺して自分も自殺するとか。あるいは50歳代の息子さんが80歳代の親に対して、もう介護の疲れから発作的に相手を傷つけるとか、そんな色々な介護地獄の話がありました。1990年ぐらいまでは在宅のそういう実際に介護地獄になっているような方に対するサービスというのは全くなかったんです。しかもそういう方が施設に入れるかというと、施設に親をあずけるということに対してかなり社会的には偏見というか、ちょっと肩身が狭い思いをした。なかなかあずけられなかったというのもあります。実際に老人病院に入る方も多かったわけですが、私の身の回りでもたくさんおられました。自分ひとりで住んでいる場合、冬の間は寒いし、食事の支度とか入浴とか、そういうことが大変だから病院にいたほうがいいということで、生活のために病院に入るという方がすごく増えていたわけです。これは二つの面でまずかったわけで、よくいわれるように、こういう方は別に本当に毎日お医者さんに診てもらう必要があるわけでもなんでもなくて、生活上の食事であったり、入浴であったり、トイレに行くとか、身の回りのこととか、あるいはリハビリが必要とか、そういうことが必要でも実際には病院にいると。ベットの上にいることが多いわけですから、寝かせきりにされて、どんどん体、体力も気力も衰えていって寝たきりになっていくということで悪化していく。これがすごくまずいこと。もうひとつは実際には病院に入院すると、そこにはお医者さんもいるし看護婦さんもいる。すごい検査機器とか立派な設備も置いて、それを償却していく。その施設としても病院のための施設で、たくさんお金がかかっているわけです。そこに入院するということは高級ホテルに泊まるよりもたくさんお金がかかっているわけです。それが医療費をどんどん圧迫していく。このふたつの問題があったわけです。
聞き手 これは日本の前にアメリカでも同じような問題があったみたいですが、その医療費の負担がどうしても1割ではまかないきれない、負担をアップしなければやっていけないということになった理由のひとつになってきたのかもしれませんね。この老人、お年寄りが入院をするというようなことが。
笹木 そうですね。どんどん絶対数も増えるし、受け入れるサービスがないともう社会的な入院でどんどん増えてくる。それに対してこの2000年からこの介護保険を始めたということです。食事とかトイレとか身の回りのことが全部自分で出来るかとか、自分だけで立ち上がれるかどうかとか、歩くことが出来るかどうか。いろいろな段階に分けて、要支援から介護度5まで、6段階ぐらいに分けて、それに対して色々なサービスを、さっき言った日常的な生活上の支援です。リハビリであったり、食事であったり、入浴・トイレであったり、家事であったり。そういうサービスをしようということを2000年から始めたわけです。それを3年目に見直しをするということになっていまして、それが今年の4月になるわけです。事業計画は市町村と県がもう一回見直しをするし、保険料、この額も修正をする。介護の色々なサービスに対しての報酬の額、これも、国がもう一回見直すということで今作業が始まって、1月末頃からこの報酬の額をどう変えるかというのが具体的に出てくる状態です。福井県でもそういう動きがこれから出てくるということなんです。
問題は「痴呆性老人の介護」と「在宅介護」
その中でも象徴的なことが2つあって、ボケの話から今日は始まりましたけれども、このボケということに対する効果はこの3年間どうだったのか。あまり出ていないんではないか。痴呆性の老人に対して、この介護保険で対応がそれほどは出来ていないという問題と、もうひとつは元々は家にいて介護を受けられる制度にしようということだったわけですが、在宅介護、家でのサービスを受けるという率があまり増えていない。結局施設でさっき言った色々なサービスを受けるということが非常に多いということなんです。どのぐらい深刻かというと、介護が必要な方が285万人いるといわれていますが、そのうち150万人が痴呆性老人だといわれているんです。しかし実際には、こういう痴呆性老人で自宅で家族によって世話されている人は7割いる。あまり減っていないんです。この問題がどうして介護保険が対応できていないかという大きな問題。在宅介護があまり進んでいないということも、これは施設介護に比べて在宅介護は割高になっているということであまり進んでいないのではないかとか色々いわれています。それをとにかく福井県、福井市とか市町村に沿って色々見直しを今していっているということですね。
聞き手 なるほど。介護保険制度が始まってもう3年経つんですね。しかもこれを4月に見直すということであれば、あまり悠長なことを言っていられるような時期でもない。4月なんてもうすぐそこですもんね。
笹木 そうです。さっき言った報酬や保険料の見直しについての話はあるんですが、事業の計画そのものを見直していくっていうことはあまりいわれていないんです。もっというと、この制度そのものがあまり知られていないんですよ。だから案外、実際に保険料を払っている国民の側から、県民市民の側からここをもっとこう変えてくれとか、こうすべきだとかという声があまり出ていないというのもあります。しかし、最近よくいわれますが、これからは生活する場所としての快適さが人を集めると。地方都市もそれが大事だと。考えてみると、年を取った時にボケたくないとか、あるいは寝たきりになりたくないとか。これはすごく切実な問題です。だから街づくりの一環としても、福井で例えば冬になると雪になって、どうしても外にお年寄りが出にくくなると。そういう方がボケないための街づくりにどうするか。そういうことも含めて、福井型の介護をどうするか。
聞き手 魅力的な福井になるためのひとつの条件でもありますね。今、高齢化社会になる、あるいは老後に不安をもっている。老後の不安があるからお金を使いたくない。これもひとつ景気低迷の一因なのかもしれない。そういう意味では、この介護保険がうまく機能して、老後の不安の解消にもつながれば景気のほうにも影響を及ぼすことも考えられるわけですよね。
笹木 もちろんそうです。たぶんお年寄りも、もっと消費をするようになりますよね。
聞き手 そうですね。そういう意味では非常にこれは大切な問題です。また機会を改めまして、今後の福井県でどうなっていくのかも含めてお話を聞かせてください。
笹木 はい。見直しが進む段階でまたお話したいと思います。