| 笹木 ちょっと東京に出張していて、その時に今回4回目で、南青山291という施設に行きました。青山の骨董通り、よくいわれるファッション関係、若い人に人気がある、その中心の交差点から歩いて5分のところに福井もアピールする施設です。291とは「ふ・く・い」らしいんですが。これは元々青山荘といって、福井県関係者が使える施設で、いい場所ですけれどもすごく古くて朝の食事もあまりおいしくないというような施設だったんですね。それをいわゆる民間の知恵とかノウハウを活かす形で、東急不動産がその青山荘を撤去する費用、新しい建物を建てる建設費、も民間の東急不動産が建てると8億円程度。福井県はその中の一部に間借りをする。20年間福井県の土地を東急不動産に貸して、代わりに福井県が借りているスペースについての賃貸料とお互いに相殺される形なんです。そのスペース以外にも2階にはキムタクが行っている美容室が入っていたり、CAF?で結構有名な飲食店で中国料理店も入っていたり、福井県の料理屋の方が福井の食をアピールするようなレストランもやっている。福井のいろいろな産品、家具ですとか伝統工芸ですとかをアピールする店もあります。これもテナントとして入っている。これは県とは別にそれぞれ民間として店子として入っているわけです。オープンの時にも行きましたが、何度か行っても若い人とか、あの周辺にいるような人が結構集まっています。夜、福井の食のレストラン、中国料理のところ、オープンのスペースもあって、そこも含めて人が集まっているんですね。これを見て、今のところはなかなかいいスタートなんじゃないかなと思うんです。もしこれを行政が、自分で建物を建てて、そこでこういう企画でやろうとしても、もちろんお金もたくさんかかりますし、まあ一般的にいうとダサいものができて、サービスもあまりよくなくて、人が集まらないという形になると思うんですね。もうひとつ言えるのは、よく福井県というのは物を作ったり研究したり開発したり、そういうのは非常にうまいけれども、直接売り込んでいく、宣伝するのが下手だといわれますよね。コシヒカリが福井で開発されたけれども、ブランドとしてはもう新潟のものになってしまっている。これは流通とか直接売り込むという力で向こうが強かったということです。繊維も最近は福井の繊維企業もいろいろ新しい動きをやっていますが、かつて歴史的には直接売ることを賃織だからしないので、技術的には世界一だけれども最終製品化していないこともあって、売り込んだりPRすることが下手だといわれます。で、ここでそういった福井県の産品もアピールする、食もアピールする、他の人気のあるテナントもあるということで、まあアンテナショップですかね。そういうこともできるし、それと言い忘れましたけれども、福井に関係する人がオフィスとしても、スペースを借りれたり、展示スペースあるいはホールも借りられたり、そういうものもあります。非常にいい動きじゃないかなと今のところ思っているわけです。これは新しい、いい動きだと思うんですけれども、それとはちょうど反対の話で悪い話。昨日の朝刊にも出ていますけれども、この10年間で福井県も含めて全国の都道府県の蓄えている、貯金みたいなものですね、財政調整基金、これが90年に比べて全国の合計額で言いますと大体半分ぐらいに減っているということなんですね。
聞き手 千葉とか京都とか5つの府県ではもうなくなっていると。
笹木 0とか0.5とかです。福井県の場合ですと92年度は192億円あったのが10年で149億になっている。かなり減っているということですよね。何故こんなに減ったのかという話なんですが、よく自治体、福井県でもそうですけれども、実際そういうことを担当していた人に聞くと、今はすごく税金の収入が減っている、企業も収益が減っているから法人税も減る。民間の一人一人、働いている人も残業が減るとかボーナスや給料も減ったりするからその分所得税も減る。税収が減るわけです。しかしバブルの頃はすごかったと。法人税も所得税もドンドン増えてくると。その時期を今振り返るともう少し貯金を増やしておけばよかった。借金を、地方の借金もあるわけですから、返しておけばよかったと。中央、地方の人の公務員の方にお話すると、あの頃、バブルはずっと続くと思っていた。だから行け行けどんどんだったと。旧大蔵省もなるべく借金を返して蓄えを増やしてくださいなんていうことは全く言わずに、どんどん使ってくださいという。むしろそういう指導というか誘導が強かったというんですね。
聞き手 バブルが続くというよりも、それ以前から日本の場合、右肩上がりを前提とした、そういうことをずっと続けていましたから、いきなりバブルがはじけるとか、これから低成長になるとか、そういうことは想定できなかったんでしょうね。
笹木 そうですね。そこでさっきお話したような中央の主導というか誘導という話ですが、それがかなり影響したということで、地方が本当に必要な物を自分達の判断で造って借金が増えるのならばまだいいんですが、さらに悪いのは必ずしもそうでないということです。いろいろな手枷足枷がありまして、ひとつは地方債、まあ地方での借金です。これは地方が自ら借金するのだから地方の判断で、県で、判断して地方債が発行できるのかというと、やはり自治大臣とか旧大蔵とかそういう許可がいるわけです。ここで国の色々な指導というか、誘導が利きます。もうひとつはだいぶ前にこの番組で財投という話をしましたが、要は郵便貯金ですとか、簡保、年金の積立金、これがいったいどこに使われているんだということで、今だと大体600兆円あります。国の予算、一般会計は80兆円ぐらいですけれども、もうそれに比べて桁が違う600兆円という額が何に使われているか。今ようやく変えようと動きが出てきましたが、今までずっとこのお金がいろいろな政策金融、簡単に言ってしまうと旧建設省、旧大蔵省、旧通産省、旧農林省、それぞれが〜公庫、例えば住宅金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、それぞれの省が公庫というお金を貸す団体を持っている。それぞれがまた事業をする事業団というのを持っている。さらに公団。道路公団とかが有名ですけれども。各省ごとに金融公庫、事業団、公団というのを持っていて、それぞれが全国的にも、地方に対してもいろいろなお金貸しますよという事をやるわけです。で、貸しますよとやる時に、各省ごとのいろいろな規制とか条件をつけて、こういうことだったら貸しますよということでやるわけです。そのお金を地方も借りるから結果的に各省とか国のいろいろな誘導とか指導にあわせて計画を作る。それで地方の実情にあっていないような物をたくさん作っていくことにつながるということです。こういうことを続けていて、結果的にはさっき言った地方債の発行も政策金融も財投も、これも全部国の指導のもとで作ってきたけれども、借金は莫大に増えてきた。そういう結果に今終わっているわけです。これからこの福井県の課題として、これから街なかに公共的なてこ入れもして、いろいろな人が集まるものを作っていこうという話がありますし、それは大事なんですが、財政、とにかくお金があんまりないわけです。もうひとつ言うと、昔、第3セクターといって何か民間と一緒に作るといっても、行政が直接お金を出しすぎるとまたそれがその後焦げ付いたりする。さっきの青山291じゃないですが、民間だから人を集めるとか、人にアピールするということをうまくやれる点があるわけで、そういうものを活用する。お金もなるべく民間が払える分は払うと。で、民間がそれに参加するときには行政のバックアップもあって、民間が自分だけでやるよりは利点もあると。そういう構造でどれだけ人が集まるものを、新しいものを造っていくかというのが問われているんではないかと思います。
聞き手 なるほど。もちろん民間が全ていいとは言えない所が有るのかもしれませんが、それでも今盛んに言われているのは、行政だって地方自治体であったとしても、そこにはやはり経営感覚がなくてはいけないんだと。今お話に出てきたような、全てが右肩上がり、バブルがはじけないのを前提としているということを続けてきたから、今こういう憂き目を見ているということであったとするならば、ちゃんとお金のあるときには借金を返すとか、お金のあるときに貯金するとか、民間だと当たり前のことができていないということなのかなと思いますよね。
笹木 そうですね。それとこれからは今まで造ってきた施設が建て替え、あるいは改修する時にもなってきます。高度成長期に造った物がたくさん、建て替えの時期になります。その時にさっき言った「これを果たして行政がやり続ける必要があるのか」「県庁の職員が張り付いてやっているけれどもこれは本当に適当なのか」「サービスは本当にいいんだろうか」「民間がやったらもっといいサービスになるんではないだろうか」そういう見直しも今年は統一地方選がありますけれども、どんどん声を出して候補者に言って、そういう声を受け止める事のできる方が活動される、活躍されるといいなと思います。
聞き手 この番組でも時々話をするんですが、色々な時代時代の節目といわれる、そういう年があったりします。笹木さんの話の中でソビエトの崩壊した年というところから政治が変わったようなこともあるでしょうし、あるいは30年前、今年にしてみれば31年前ですか、沖縄が帰ってくる、中国と国交を樹立する、あの辺りがそろそろ戦後の終わる年だったかもしれない、高度成長もピークだったかもしれない、ということになると、その30年間で建てたから今建て替えなくてはいけない建物が在るのと同じように、ひとつのサイクルごとに見直しができるものというのはあちこち転がっているはずですよね。そういうものをちゃんと冷静に見つけていって対処をしていけばこれから先慌てずに済むことも出てくるかもしれませんね。
笹木 行政とかそのサービスが全部自分たちの税金だという感覚を持って見直すということですよね。今までそういうことをしなくても何か自動的に借金も返すことができると思い込んできたけれども、そうではないというのが特に低成長ではっきりしたわけですから。
聞き手 そうですね。2月になりますと福井県の県立図書館も下馬にできます。こういった施設が福井県内あちこちにあったりするんですけれども、それも全て自分達が造った物なんだと。福井県が造ってくれたんだというふうな考え方ではなく、自分達のお金で造ったんだと。だとすれば利用しやすいか、アクセスはどうか。いろいろなことを検証していくということが必要になってくる。
笹木 どれだけそういうことを声あげる人が増えるかで行政サービスも変わるということなんでしょうね。 |