毎週ラジオ出演中

聞き手  今日はどんなお話をしていただけますか。


フランスは出生率1.9まで回復した

笹木  今動きがこの国会の中でもありまして、来年から具体的になると思うんですが、要はよく言いますよね。最近子供の数がどんどん減っていると。出生率もどんどん減っていると。このままだと日本の人口はどんどん減って、経済にもさらにマイナスになるとか。よくそんな話がありますけれども、「子育て支援行動計画」。子育てを援助する、支援するための行動計画というのをまず法律を近いうちに通して、来年から各県や市町村、そして大きい企業でもその行動計画を作ってもらおうという動きがあるんです。確かに出生率は平成13年で1.33になったといわれます。人口を維持するためには2.08ぐらいが必要だといわれているわけです。だから非常に深刻なのは間違いない。私が知っているあるベテランの世代の方で、もう70代の方ですけれども、そういう方が「俺は若い人に会うと、最近子供が非常に少ないから結婚しなくてもいいからせめて子供だけを生んでくれと、そう言っているんだ」と言うんですね。なかなかそうは、僕なんかは言えませんけれどもね。でも実際これは冗談ではなくて、フランスは出生率をここ数年、5年から10年でかなり回復した。1.9人まで回復したんですね、最近。フランスの場合には結婚していなくても生まれた子供に対する色々な国や市町村の補助、その母親に対する補助をかなり予算面でもつけている。こういったこともプラスになって1.9人まで回復したということです。これはまあ雑談ですけれども。この行動計画でやろうとしているのには特徴がいくつかあって、今までこういう子育て支援というと、母親が仕事と両立するために、それが今両立していないから子供を生まないんだということで、保育所ですとか、そういったことを中心にやってきたわけです。けれども、今度の特徴の1つは地域ということなんです。要は昔、非常にたくさん子供がいた時代。この時には大家族、家族が3世帯であったり、家族で支えた。あるいは地域での色々なつながりもまだ残っていて、地域でもいろいろなアドバイスをもらったり、支援もあったりと。今は両方ともないと。だから単に保育所を充実しただけでは駄目で、地域でいろいろな相談とかも含めて支えようと。具体的には地域でのNPOとか地域の高齢者、そこがアドバイスや色々な手伝いをしたりするような、そういう地域ごとの集いの場を作ろうとか、あるいはそういう子育ての経験のある人たちで子育てサポーターとして登録してもらって、そして色々なアドバイスを電話やちょっと来てもらって受けられる、そんな体制も作ろうと。これが1つ目の特徴みたいです。2つ目が男性も含めた働く方を企業も行政ももっと考えてくれということです。私なんかは全然偉そうなことを言えなくて、小さい子供から「最近はお父さんの顔をよく見るようになったね」といわれているので、かつてはかなり非人間的な生活をしていたわけですけれども、男性にも育児休暇の取得率の目標値を示して、企業でもその達成を図るとか、そんなことが2つ目の特徴です。3つ目が教育ということなんですが、実際に子供がいる人だけで色々な調査とかアンケートをして、「理想の子供の人数は何人ですか」と子供がいる母親に聞きますと、その結果は2.7人らしいんですね。

聞き手  ということは、2人あるいは3人と答える方が多いということですね。


生みたいけど、生まない。経済的理由、特に教育費。

笹木  そうですね。ですから希望としては3人近く生みたい。子供のいる方の77%の方、8割ぐらいの方はもっと子供が欲しいと思っているということなんです。何故実際には生めない、あるいは生まないのかということなんですが、やっぱり最大の理由が経済的な理由らしいです。まあ仕事との両立が出来ないからという理由もありますけれども、それよりダントツに多いのが経済的な理由。その中でも教育にかかる費用、ここが非常に大きいらしいです。それに次いで、体力とか根気がいるということと経済的な不安、それが同様にある、そういう理由もあるんですけれども。とにかく教育費にかかる負担が非常に大きいと。これがはっきりしてきたみたいなんです。それで考えますと、これも専門の人といろいろ話していてビックリしたんですが、イギリスとかドイツとかノルウェーでは小学・中学そして高校はもちろん、大学でも、公立の学校はいわゆる授業料が完全にタダらしいんです。だからそういう国では教育については国が完全にみるということを既にやっているということです。日本の場合にはまだそこまでとてもいっていないわけですけれども。この教育の負担をどうするかということがかなり話題になってくる可能性が高いということですね。

聞き手  なるほど。でも経済的な理由と聞いて最初にエッと思うのは、日本は世界でもトップクラスの裕福な国のはずですけれどもね。

笹木  そうですよね。日本には人しか資源はないと昔からよくいわれます。その割に教育にはまだまだあまりお金をかけていないのかもしれませんね。

聞き手  なるほど。国がお金をかけていない。


豊かな土地では繁るばかりで、実をつけない 

笹木  そうですね。国も市町村もまだまだかけていないのかもしれませんよね。内容ももちろん大事ですけれども。もうひとつは、今お話したのは子供が既にいる人ですが、結婚したくない人とか子供を欲しくない人、これも当然増えているわけです。だいたい社会が豊かになると、これはもう古代のローマでも帝国が豊かになるとやっぱり出生率が非常に減った時期があるわけです。植物でもやせている土地だと実をたくさんつけるらしいです。豊かな土地だともう自らが繁るばかりで実をつけようとしない。まあ昔からその傾向はあるんですが、それにしても結婚したくない人、子供が欲しくない人が増えている。私なんかも知っていますけれども、本当に生き方をはっきり自分で意識してそう選択しているのならばいいんですが、実際50代ぐらいになって「やっぱり子供いなくて結局さびしいな」と。子供をつくらなかった人、あるいは結婚されなかった人でそういうことをいう方が多い。先週、不登校とか引きこもりのこともお話しましたけれども、そういう研究者の方と話をしていましたら、結局教育の内容にも問題があって、昔から「自由な個性」とか「無限な個性」「無限の可能性を持っている一人一人の個人」とかよくいうけれども、それを錯覚して考えすぎると結局それが引きこもりとか登校拒否につながるとその研究者は言うんですね。実際にはその社会の中で生きていくというのは、決して一人一人無限なことが出来るわけじゃないし、しかも毎日の仕事のなかで自分のやりたいことを活かしてといっても、少しずつ少しずつ失敗を重ねながらそれをやっていく。だからそれには非常に根気が要るし、決してかっこいい、無限の可能性をすぐ実現できるような毎日ではない。そのギャップに苦しんで引きこもりとか登校拒否がおこる場合もあるんだと言うんですね。ちょっと似たようなことがこの結婚したくない人、子供が欲しくない人にもあって、独りの方が、子供いない方が楽だ。これはもう物理的には間違いないんですけれども、しかしその、そうじゃないことを逆にコツコツやっていって豊かな物を得るという面もある。そういうことを余りにも教えなさ過ぎるんじゃないか。要するに、戦前はよく滅私奉公といったけれども、戦後の教育は滅公奉私。公を滅ぼして私だけに仕えると。だから無限の自由、無限の個性というのも深く考えてそうならいいんだけれども、勘違いを起こしている可能性もあるんではないか、とその専門家は言うんですね。なるほどちょっとそういう傾向はあるかなということを思ったりもしていたんですけれどもね。

聞き手  なるほどね。私も子供が3人いますけれども、子供のいない頃といる今とを比べて、実感として湧くんですが、50年後100年後を論じる。50年後の日本はこうなるだろうとか、100年後の世界はこうなるだろう。その為にこれをしましょう、というのは子供がいないことには実感を持って話できませんね。自分の世代でお終いなんだと思ってしまえば、あと30年50年ぐらい先のことまで分かればいいわけです。ところが子供がいるとやっぱり100年後200年後、子供の為、孫の為にしなければいけないことという話をしなくてはいけないという意識が生まれますよね。

笹木  それとそういうことについてもさらに現実的に、具体的に考えやすくなりますよね。僕自身も若い頃は、あまり結婚とか子供とかというのはピンとこないなとか思っていたんですけれども、実際できてみるとやっぱりこんなにいいものはないなと。まあ子育ての手伝いしなくてよく女房には文句をいわれていますけれども。やっぱり、これほどすごいことはないなと思う。そういう素晴らしさが若い人とかまだ結婚していない人にもっと伝わっていかないと駄目なんでしょうね。

聞き手  そうなんですね。ですから子供も1人目、2人目、3人目ってだんだんと子育てが楽になってくるっていいます。だんだんその段取りもわかってくるし、泣き方のトーンも聞き分けられるようになってくるしというようなこともきっとあるんだろうなと思うんですけれども。国が富めば子供が少なくなっていく。色々な国々から来るニュース映像なんかを見てみると、難民キャンプやなんかにたくさん子供がいるんですね。それも飢えた子供たちがたくさんいる。人間というのは貧しいとか本当に命の危機が迫り来るとかそうなると本能的に子供をつくろうという気になるんですかね。

笹木  そうですね。それが財産だということがありますからね。単に避妊の技術がないとかということだけではなくて、やっぱり財産、子供は宝だという気持ちでそうする面もあるみたいですね。

聞き手  そうですね。こういう言い方がいいかどうか分かりませんけれども、子供に投資するのが一番だと。株式や金に投資したりすることも大事なことなんでしょうけれども、子育てをする。で、子供が今度自分達の家に返してくれるものというのが大きいんだというのが本当は分からないといけないですよね。

笹木  そうですね。だから今年から始まって、来年に向けて色々な市町村も県も計画を出してくると思うんですけれども、それが本当に一番の宝である子供を育てることのプラスになるかどうか。これは県民、市民もしっかりチェックするべきです。まず計画が出てきますからね。

聞き手  なるほど。その計画を見て、やっぱり声を上げるということも出来るわけですよね、我々は。

笹木  もちろんそうです。それが完成するまでに色々要望とか声を上げていくことが大事です。

聞き手  そうですね。いろいろな案が出る。それに対して声を上げる。また次の案が出る。というキャッチボールが出来ないで、もう一方的に「こうしますよ」ってトンと決まってしまったのでは、何のための子育て支援なのかということになってしまいますもんね。

笹木  そうです。しかも今回はその地域で支える、教育との関係が強くなるわけですから、どんどん声を言っていく場も多くなると思うんです。

(文責:ささき竜三事務所)