聞き手 アメリカ・イギリスによるというよりは印象的にはアメリカによるイラク攻撃が始まりました。何故アメリカがイラクを攻撃しているのか。イラクに油田があるからではなくて、油田の上にイラクがあるだけなんだとアメリカは考えているんじゃないか。国はどこでもかまわないけれども、油田の上にイラクがあったから仕方ないじゃないかという、ジョークにもならないような言い回しを聞いたことがあるんですが。
世界制覇の大義名分を与えた?
笹木 そういう面は間違いなくあって、今回の攻撃はテロへの対策というのがまずあるわけですけれども、石油がアメリカの経済にとって非常に大事だということも大きくありますよね。今日も4時ぐらいまでテレビのニュースを見ていたんですけれども、湾岸戦争の時にはパトリオット、イラクからのミサイルに対して迎え撃って命中させて防ぐという迎撃ミサイルなどの映像が色々ありました。今回の戦争でもそういう映像は出てくると思うんですが、金正日がかなり注視していると今日のニュースでもやっていました。イラクで地上戦が始まって、どういうような戦争をするかというのを注視している。これは悪の枢軸でイラク、イラン、そして北朝鮮。同じようにアメリカにいわれているので自分達が次にやられる時にはどういう戦争になるのか、ということもあるから注視しているといいます。もっというとアメリカの圧倒的な軍事力ですよね。これでさらにアメリカの影響力が増すといわれています。ブッシュがどんどん急いでこの戦争に突っ走っていったといわれるわけですが、2001年9月11日の世界貿易センタービルのテロ、あれで3025人が亡くなったといわれますけれども、あれ以前のブッシュというのは思いやりがある保守主義ということをいっていて、教育であったり医療であったり、あるいは移民についてもその移民の言葉を守るとか、そういうような思いやり、寛容な政策をしていたんです。それがあのテロの事件があってからはもう安全一本と。あるいはテロとの戦争と。もうこれが自分のアメリカ大統領としての使命だと。もうそれで一点集中になったといわれています。
アメリカ国内の政策決定に関わった方もいっているんですけれども、アメリカにとってあの9.11のテロが世界制覇の大義名分を持たせることになったというわけです。テロとの戦争だと。これに使命感を持ってどんどん行くんだと。しかし目的の半分は他にもあって、経済だろうと。海外からも言われているし、アメリカ国内でもそれを認める人は多いわけです。過去の例から見ると、あの2001年9.11のテロがあった直後。まずはビンラディンを捕まえてやっつけるんだと。その為にタリバン、アルカイダ、これを攻撃するんだとアフガニスタンの攻撃がありました。あの時もすごい軍事力、ハイテクを使った軍事力で洞窟に隠れているタリバンをやっつけたとか色々な映像がありました。あの結果今どうなっているか。よくいわれますが、中東での石油もこれからのエネルギーにとって非常に大きいですけれども、中央アジア。アフガニスタンも近い。旧ソ連の領域だったわけですけれども。ここには石油とか天然ガスが非常にたくさんあるといわれている。しかもまだ余り開発されていない。旧ソ連時代からソ連が崩壊した後もこの中央アジアの資源をどこが押さえるかというのがすごく大きいといわれているわけです。結果的にアフガニスタンを攻撃した後でアメリカの軍隊が今も8000名以上は駐留しているというんですけれども、アメリカの空軍基地を拡大するという名目でどんどんこの中央アジア、例えばカザフスタンですとかキルギスとかウズベクとか、そういうところでの影響力をすごい持つに至ったと。カスピ海近辺の石油・天然ガスはアメリカがほぼ押さえつつあると今いわれているんです。だからこれと同じようなパターンで、以前ここでもお話しましたけれども、サウジアラビアとかイラクの地下にはまだ全く手をつけられていない石油が40年分・50年分あるといわれている。色々な計測機器が発達しているのでその深さも大体想像がついている。これが非常に魅力だと。イラクを攻めた後もアメリカの軍隊が駐留をずっと続けて、ここでの石油に対する影響力も増したいと。これも大きな目標だといわれているわけです。
好きなように世界をつくりかえる?
さらにいうと、このテロが起こるきっかけというのは中東での貧しさだというんですね。貧富の格差が非常に大きい。イスラムを宗教としてとっている国がアメリカとかヨーロッパ型の経済的な発展を目指そうとしても余り成功している国が少ない。石油ですごくお金を儲けているというサウジアラビアでも今若い男性の失業率は20%を越えているんです。だからどんどん石油でお金は儲けているんだけれども、貧富の差はすごく拡大して貧しい人がますます増える。結局そういう人がテロやイスラム原理主義に走っていくと。これはやっぱり政治体制が悪いだといって、中東の新しい秩序。これをアメリカの力で、ごり押しで作り変えてしまおうと。そこまでしないとテロもなくならないんだという理屈なわけです。それがあって今やろうとしているわけです。キリスト教とイスラム教との戦いで「文明の衝突」という本を書いたハンジントンという方がいて、アメリカのクリントン政権で政策にも関わった方ですけれども、その方が言っているのは、今のアメリカの態度というのは人権とか民主主義とかそういう価値観を他国に強制する。宗教的自由についてもアメリカの基準に応じない国々に制裁を加える。自由貿易と開かれた市場というスローガンでアメリカの会社の利益を促進する。アメリカの武器輸出は増やすけれども、他の国の武器輸出はさせないようにする。一部の国を無法者国家として世界の諸機関から締め出す。まあ完全な一国主義になっていると。もうアメリカは超大国だと。もう自分が好きなように世界を作りかえる。さっき世界制覇という言葉をいっている方もいるといいましたけれども、アメリカ国内で。そういうふうに行け行けどんどんになっていると。このイラクについても戦争の後のことは、その体制を変えるためにアメリカの一国で変えるということをいう人もいるし、それでは余りにひどいから国連の力を借りて変えるといっている人もいるんですけれども、このアメリカ一国の力で変えるといっている人は、第2次大戦後日本を占領した。アメリカ中心で日本を民主主義の国家にしたと。これをモデルにしてやるんだといっているわけです。まあそういう形通りにいくかどうかは非常に微妙ですけれども。振り返って考えると結局ずっと日本の占領があって、日本はアメリカに安全保障とか防衛とかは全部頼っていればいいんだと。何か物騒なことがあったらアメリカが代わりにやってくれると。そういう考え方の癖はこの占領のときからずっと続いています。
聞き手 昨日も小泉さんが演説する中で、日本への攻撃はアメリカへの攻撃とみなすとアメリカがいってくれているから日本は守られている。じゃあアメリカが攻める時には後ろにつかなくてどうするという、そういう論調ではありました。
アメリカによる日本経済保護は、とっくになくなっている
笹木 今ももちろん事実としてそういう面はあるんですけれども、北朝鮮の問題もアメリカが何とかしてくれる。だから何とかしてくれるかもしれないアメリカの機嫌を取っていないといけないから、何でもいうことを聞くしかないんだと。悩ましいんですけれども、しかしそれだけでずっと来た。今もそれが続いているということなんです。もっというと戦後の復興の中で経済についてもアメリカが全面的に守ってくれた。以前もいいましたが、米ソの冷戦が終わってからはアメリカはそれを止めた。実際さっきいったハンジントンさんがクリントン政権で言っていたことには、90年代最大のアメリカの脅威はソビエトではなくて日本の経済力だと。91年に言っているわけです。ですから少なくとも経済的に日本を保護するというのは完全にこの頃からなくなった。最近アメリカの国内からも出てきている意見で、これは日本に好意的なんですが、結局今までは日本は明治からその後第2次大戦と急速に大きな国になって、軍事的にも大国になった。放っておくと非常に危険なので、これを封じ込めるために日米安保で軍事的には骨抜きにする。何にもやっちゃいけないと。軍事に関わることはなにも議論もさせないようにする。これはアメリカが最初占領でそういう方針を決めたんですけれども、そうするとアメリカが全部面倒を見ないといけないですから、もう少し普通の国、当たり前の国として、軍事についてもある程度日本が自前で考える癖をつけさせないといけないんじゃないかと。経済を保護するのを止めた。さらに軍事についてもアメリカが何でもかんでも世話する時代じゃもう無いんではないか、というのが最近出てきているわけなんですね。今回例えばイラクに対する攻撃にドイツは反対しました。ドイツも第2次大戦で負けて、いろいろこう占領されたわけです。しかしドイツは徴兵制もしているし、アメリカに次いでヨーロッパで一番の軍事大国である。アフガンとか湾岸戦争の時にもドイツは2000人以上の救援部隊を派遣して、難民救援、保護活動をやっている。食糧支援もやっている。そしてお金を出しても何に使ってもいいですから使ってくださいという形でアメリカに渡したりはしていないんです。ですから日本もまず北朝鮮のこともありますから、今必要なイラクの問題について言うと、食糧支援とか難民救援、これについては金だけではなくてちゃんと自衛隊とか、あるいは日本のNGOとかの協力も得て主体的に、アメリカがやらないことまでも積極的に難民救援、食糧支援やっていく。これが大事だと思います。もうひとつは戦後の復興で、それがあるとしたら、お金を出すだけではなくて、何を重点的に日本はやるのかということを直接、目標を決めて復興に関わる。ここからまず自前で国際関係、あるいは安全保障を考える。この癖をつけないといけないですよね。
聞き手 なるほど。誰かが守ってくれるということではなくて、自分でひとり立ちをして自分で汗をかくと。そういうことを始めなくてはならないということなのかもしれませんね。
笹木 北朝鮮の問題でもアメリカが今回のように一国だけで独走する可能性もあるし、本当に面倒を見てくれるかどうかも100%の保証はないということですよね。