聞き手 先週うかがった介護保険にまつわるお話。その介護認定も含めて、あるいはその施設の順番待ちも今大変な状況だし、果たしてこれが簡単に片付くのかという問題もあるというお話ではあったんですが、今日もその介護についてですね。
この春から施設入所の順番が変わります。
笹木 先週お話したように、要は在宅で介護を受けるということをなるべく進めようと3年前に目的としてあったわけですが、あまり進んでいなくて、結局施設に人気が集中している。福井県内でもそうです。施設に入りたいけれども全員は入れていない。県内でも2600人待っている。これを県は5年間でなくそうということで、施設を増設するとか新しい施設を造ると。しかしお話したように、これは一ベット当たり1000万円かかる話で、2600人の待ちをなくそうとすると260億円かかる。これは大変なんでどうするかということで、福井県でも施設の待ちの順番を届け出順ではなくて、要は切羽詰った、その度合いによる順番にしようと。2600人のうち本当に切羽詰った方は福井県内で700人だといわれているんですね。そういうことで始まるはずなんですけれども、先週も色々なことは施設ですとか市町村の介護担当の課、窓口とかあるいはケアマネージャーとか国民健康保険の連合会の窓口で聞けば、「どう変わるか」「どういうふうにもう一回施設に入りたいという申し込みをし直したらいいか」、そういうことが分かるはずだとお話したんですが、若干やり取りしていますと、「いや全然ないよ」と。連絡をとったけれども、例えばある市では、「全く分かりませんので県で聞いてください」「施設に聞いてください」と。「全然知りません」という方もいたらしいんですね。しかしもう3月には県から、各市町村の担当窓口の課長レベルの方には2回その説明はしていると。もう今から各施設での評価も変えていくんだ、ということで行っているはずなんですけれども、問い合わせしても全く分からないという、そういう市町村もいっぱいあるということです。まあこういう状態では困るのですが、例えば非常に進んだというか、一生懸命やっている例、これは県外の痴呆性老人の介護に関わる事例があります。
「顧客調査」による介護サービス
先週もお話したように、痴呆性老人がどうして家族のしわ寄せが減っていないかというと、痴呆はひどくても体が丈夫だと要介護での認定で、低く、大したことないと認められてしまう。これで今、この4月から、施設に入る場合も痴呆の方は優先しましょうという話になっているんですが、しかしそれは元々どこがおかしいかというとその評価の仕方、審査の仕方がおかしいんだと。痴呆性老人が軽く見られてしまうのは何故なのかということで、3年前のスタート時点から、全国一律に厚生省が責任もって作ったコンピュータのソフトがあるんですね。このコンピュータのソフト、もう百何十項目あるわけですが、その項目を入れると一人一人の症状に合わせて介護度1とか2とか3とか出てくるようになっているわけです。これがおかしいから痴呆性の方が軽く見られてしまうんだと。もうスタートの時、3年前からそのことに気がついたのが千葉県の我孫子市なんです。13万人の市ですけれども。このソフトに従ってやっているかぎり痴呆性、ボケ老人を抱える家庭の方の負担は減らない。痴呆性の方は軽く見られてしまう。ここをどうするんだということに最初から取り組んだわけなんですね。で、何をしたかというと、大変な作業なんですけれども、実際にその痴呆性老人を介護している家に24時間泊まりこみで、15分間ごとにずっとその痴呆性老人の状態を調べていくらしいんです。そうするとボケがひどい時、そうでもない時、一体家族はどんな大変さがあるのか。徘徊行動や昼夜逆転、火の不始末、あるいはお金の不始末、ちゃんと管理できないとか。あるいは不潔行動とか、食べてはいけないものを食べてしまうとかもう色々あるわけです。そういうことは15分毎に調べていくと如何に大変かということがわかる。その調査を元にして、このコンピュータではここがおかしいんだということを徹底的に作り変えていったわけです。で、これが面白いんですが、介護保険が3年前に始まった時には、「これから各市町村ごとにいいサービスを競ってください」と厚生省も言っていたわけです。介護保険が通った時は国会でもサービスを競うからよりいい制度になるはずだということでやったわけです。ところが我孫子市が厚生省のコンピュータはどうもということで調査しなおしているのを、余計なことをするなと。最初はそういうことをいったわけです。で、「こういう事例もあるけれどもこういうことはしないように」と、わざわざ全国の市町村に通知までしたという。
聞き手 厚生省がですか。
笹木 そうです。非常に傑作な話なんですけれども。しかしテレビ・新聞なんかも取り上げてどたばたやっている間に、結局ソフトにも色々問題があるからということで、最近は進んだ事例として役所の方も取り上げるようになってきたわけです。まあ、せめぎあいの中でかなりこの運動が説得力を持ったということです、結果的に。
聞き手 そういうことでしょうね。運動能力がOKだと、痴呆のほうで少し問題があって、実際には家族の方が一日中世話をしていても認定度合いが低くなってしまう。おじいちゃんでも、看護認定をされるために若い女性のヘルパーの方なんかがお越しになったりすると張り切っちゃう場合がある。そうなるとその時には出来るけど、普段は出来なかったり。いろいろと難しいこともあるんだろうなとは思います。
企業なみに顧客満足度をめざす行政
笹木 今のお話で、おっしゃる通りで、ひとつは張り切りすぎて認定が低くなってしまうという時もあるし、もうひとつは家族がずっと見ているよりは、やっぱりヘルパーさんとかが、これ検査の時ではなくて日常的に手助けしたほうがご本人も無表情の時間が非常に減るらしいです。だから、やっぱり家族が全部見ればいいじゃないかという意見もありますけれども、緊張感がないとボケが進むという面も一面であるらしいです。それともうひとつ、在宅介護が進まないで施設にばっかり人気がいっている。これはやっぱり在宅サービスがこの3年間、あまり満足してもらえていないんだろうと。その結果そうなっているということですよね。これについて取り組んでいるのが静岡県の藤枝市。ここもだいたい13万人の市ですけれども。ここは徹底的に満足度調査をやっているわけです。藤枝市全体で介護の在宅でのサービス、リハビリや家事サービス、あるいは家から通って色々なサービスを受けているとか。そういう在宅サービスを受けている方は全部で1404人いるらしいです。で、その方、1400軒全戸に調査票を送って、かなり細かい項目で答えてもらう。回答率は70%以上あったらしいです。で、もうこれで徹底的に今の在宅サービスのどこが、例えばお金の面、サービスの面、施設に比べてどうか、徹底的にもう調べ上げていくということをやっています。併せて、さっき福井県内のある市では電話で問い合わせてもどうなるのか全く分からない状態だと言いましたが、藤枝市とその周り3市2町ではサービスのガイドブックを全世帯に配っています。介護の施設、あるいはサービス、保険のサービス、福祉サービス。全部受付時間、担当者名、そして自己負担分、営業時間、送迎可能かどうか。全部それを見れば分かるようになっている。そこまでやっているんですね。これはやっぱり顧客重視といいますか、こういう動きがあります。もうひとつ介護保険の大きな問題として、知らない人がまだ結構いるという話も先週しました。これに対してやっているのが岩手県の宮古市。これは小さい5万5000人の市ですが、ここはまだ介護認定で1にもなっていない方でも虚弱、ちょっと弱ってきているとか、家にずっと閉じこもっているような状態になりつつある、こういう方に対して市のほうから「申請してください」と。ちょっと強制的かもしれないですけれども。もう強制的に申請してくださいと。待っているとどうしても制度を知らないで申請しなくてそのまま終わっている方もいる。そこまでやっている所もあります。ここら辺を見ますと、結局経済とか企業の社会で、顧客満足度第一主義とかよく言います。そのために要望の調査や市場調査、マーケティングをして、そこからサービスとか商品を開発したり、またクレームや不満を聞いて作り直したり見直したりということをやる流れがありますよね。まさに我孫子市、藤枝市、宮古市はこれと同じ事をやっているわけです。
聞き手 なるほど。福井も二十何万人という都市ですから、考えてみれば先程13万人という都市の例が出ましたが、同じようなこともシステム的に出来ないことはない。これから中核市目指して行くのであれば、今のうちにちゃんとそういったシステムを作っていくというのも大切なことだろうし、全国的に見ればお手本にするような事例がいくつもあるということですね。
笹木 そうです。ですからやはりこう上から、「サービスやってあげる」「福祉やってあげますよ」という形ではなくて、受け手側が第一だと。そこがどう思っているか。その要望がどうか。そこからもう一回サービスを考えていくし、手直ししていく。これがやれるかどうか。これからの政策とか行政のサービスは全部それで組替えていくという方向なのかなと、ここら辺を調べていくと感じます。