毎週ラジオ出演中

聞き手  さて、今日のお話はどのような。


アリ(日本)とキリギリス(米国)

笹木  昨日とか、アメリカの経済についての新聞記事とかニュースが出たりしていますが、イラクの戦争も終わって、ドイツやフランスもどちらかというと最初はアメリカに反対していたわけですが、戦争が終わってからはかなりアメリカに擦り寄ってきているというようなことも出たりしています。軍事でも、あるいは経済でも圧倒的な力を持っていると、アメリカについてはいわれるわけですが、一国だけが超大国になったともよくいわれています。そのアメリカの経済のことについて今日はちょっとお話したいと思っています。例えば経済的にすごい力を持っているというわけですが、貿易ではどうなのか。貿易で輸出と輸入があると。アメリカはこの貿易、やっぱり赤字な訳です。ずっと赤字な訳ですけれども、例えば2002年の数字で見ますと、年間の貿易赤字が50兆円。財政赤字、これはちょっと前まではよくなっていたんですが、また非常に悪くなっています。2003年の財政赤字、要は税金での収入と実際に使っている国の予算のプラスマイナスですが、財政赤字も36兆円でアメリカの史上最悪の財政赤字です。さらにいうと、アメリカは国民全体があまり貯金をしないとよくいいます。日本は国民の貯金の合計額、残高が1400兆だとよく言われますが、アメリカはこの貯蓄が非常に少ない。貯蓄率が少ない。日本は貿易は黒字です。財政は赤字ですが、貯蓄も非常にある。この数字だけ見ていると日本の方がよく見えるわけです。しかし圧倒的に経済状態はアメリカの方がいいという状態なんです。童話でアリとキリギリスのお話がありますよね。アリのほうは一生懸命こつこつ働いて、キリギリスは歌ったり踊ったり遊んでいる。それが冬になるとしっかり働いて蓄えをやっていたアリは楽に暮らせるようになったけれども、キリギリスは非常に困って、最後はアリに泣きついて助けてもらうという話です。このお話でいいますと、例えばアメリカはキリギリスかと。あまり貯金もしないと。貿易も財政も赤字だと。で、日本が、まあ財政は赤字ですが貯蓄は非常にして貿易も黒字、アリだとしますよね。しかしこれ冬になってもキリギリスはあまり大変そうじゃなくて、むしろアリの方が冬になっても大変だという状態なわけなんですね。それは何故なのか。簡単にいうと、アメリカは収入よりも支出が多い。稼いでいるよりもいっぱい使っている。贅沢な買い物をいっぱいしている。で、蓄えもしないで借金を続けている。じゃあ逆に何故そういう状態でずっと、冬になってもその状態を続けていられるのかということなんです。


アリがキリギリスにお金を貸し続けるのは何故?

これは簡単にいえば、そのアメリカにいっぱいお金を貸し続けている国がずっと貸し続けて、貸すのを止めないからです。その代表が日本なんです。アリがキリギリスにずっとお金を貸し続けているわけです。童話では冬になって、キリギリスが困ってアリに泣きつくんですが、そうじゃなくって、冬になっても困ることもなく、ずっとアリが冬の食事の分も暖かい住宅の分のお金も貸し続けているという、そういう状態なんです。

聞き手  これ、言葉にしてみると、確かに貸し続けるという言い方になるのかもしれませんが、貸すお金というものは普通返してもらうものですよね。

笹木  そうなんですね。これはどうなっているかといいますと、要は日本はさっきいった輸出とかで稼いだお金、これでアメリカの国債をいっぱい買う。アメリカにしたら国債というのはお金を借りることになるわけですが、円をアメリカの国債にして、外貨保有ということで蓄えているという形になっているわけです。日本の国債は外国の人に買ってもらっているのは少なくて、日本の国民が買っているのが多いですけれども、アメリカの国債はもう圧倒的に外国の人が買っている。日本を中心とする外国が買っている。で、アメリカは結果的にお金を借りている。この外貨準備高、日本は例えば今現時点60兆円あるわけですね。この殆どがドルですから、アメリカの国債を中心に持っているということなんです。じゃあ何故、貸し続けているのか、アメリカの国債をずっと買い続けているのかということですが、ひとつは外貨準備として蓄えている場合にアメリカのドルの流通率というか、これが圧倒的に大きいというのがあります。世界の中での基軸の通貨だといいますが、流通率でいうとアメリカのドルが66%です。次がユーロで12%ぐらい、その次が円で5%ぐらいです。比率が全然違うんです。もうひとつはそれだけ借金抱えていてどうもおかしいなと思っているんだけれども、ほとんどの国にとって、日本にとってはもちろんですけれども、輸出した場合に買ってくれる国、最大のお客さんがアメリカなんです。ここが複雑で、だからアメリカの言うこと、例えば国債買ってくれとか、そういうことにあまり逆らえないということがあるんです。

聞き手  ということは貸してくれといわれればもう貸さなくては仕方がないということになってくる。

笹木  そうなんです。毎年日常的に日本の作った商品を一番買っているのがアメリカです。さっきのアリとキリギリスでいうと、アリはいつも働いて一生懸命蓄えをしている。キリギリスは贅沢して浪費しているように見えるんですが、アリの作ったものをいつも買っているということです。ここがなかなかアメリカのいうことに背けない。もうひとつはイラク戦争じゃないですが、もう圧倒的な軍事力、これが経済的な色々な支配力というか影響力にもつながっているんです。例えばアメリカの国防費は44兆円。これは日本の一般歳出、予算の半分以上です。この圧倒的な国防とか軍事的な強さ。借金し続けている。しかしキリギリスは圧倒的に喧嘩をすると強いから、その安定感があって、まあ貸し続けても大丈夫かというような。本当に大丈夫なのかという問題はやっぱりあるんですが。で、ずっと続いてきたということなんです。


1985年、プラザ合意が転換点。

こういう形がいつできたかといいますと、だいたい1980年代の後半からなんです。まあ大昔のことでプラザ合意というのがありました。プラザ合意というのは、それまでずっと貿易戦争と言われていて、アメリカにとっては日本との貿易でいつも負けている、貿易赤字で日本の占める割合が1番大きい。だからこれは貿易戦争だということで自動車交渉とか半導体交渉とか色々ありました。で、この85年の時点では、要は円高にしてドル安にする。そのことで日本の企業がアメリカに輸出をしにくくする。日本の製品の価格が、まあ結果的にアメリカにおいては高くなって、それで出しにくくしようということで、プラザ合意というのはそれをやったわけです。しかしそこまで色々工夫したんですけれども、貿易戦争では結局アメリカは日本に勝てなかったんです。そこまでやったんですけれども、結局一年ぐらいで日本の輸出がまた回復してしまうんです。これは日本企業がものすごく合理化したりいい製品をさらに作ったり、色々なことをやったからですけれども、この頃から、もうグローバルな経済ではこれからは貿易戦争よりも金融戦争だと。マネー戦争だと。アメリカがいかにマネー戦争を仕掛けていくかということで、さっきからお話したような形、これを作りあげたわけです。このプラザ合意の失敗、それをやっても貿易戦争では勝てなかったという、総括でそれからは金融、お金を借りて、その借り続けるお金でアメリカが経済的にも豊かになっていくという、そういう仕組みを作り上げたんです。

聞き手  なるほど。アメリカの経済が、ITバブルがはじけたとはいえ、またよくなってきたという噂も聞いたんですが、アメリカ経済は今大丈夫な状態なんですか。

笹木  そこが結構複雑で、大丈夫なように見えるけれども、かなりやっぱり怪しくなっているわけです。例えば昨日の新聞とかテレビでもかなりニュースになっていましたが、ずっとドルが強いと。で、アメリカの株と金利が高いと。で、ドル高だと。このもとで世界中から、特に日本その他の外国からお金を借り続ける、世界から金が集まってくる形を90年代ずっと続けてきたわけです。でも昨日、新しく外務長官になったスノーさんというアメリカの方が、「これからちょっとドル安にすることもあるかもしれない」という発言をしているわけです。ですから90年代に作ったような、世界中から金借りて、しかも借り続けられる構造。その前提が続いていけなくなるかもしれない可能性が出てきているということ。もうひとつは時々言われますが、アメリカ国内でカード破産がすごく増えているんです。国としてもそうですが、アメリカの国民一人一人が稼いでいる割にはすごいたくさん借金をカードしているわけです。このカード破産をする人口がどんどん増えている。だからこういうのを見て、本当に大丈夫かと。しかし軍事的にも強いし、圧倒的な経済的な基盤を持っているから大丈夫なんだろうといって、色々な国も貸し続けているんですけれども。いやしかし大丈夫かな、とそんな雰囲気になってきているんです。まあ日本としては色々大変で悩ましいんですが、アリとキリギリスのことでいいますと、キリギリスの親分は非常に色々な知恵を使って、場合によってはだましたようなことまでしながら今言ったような形を作ってきているわけです。日本も、例えば不景気だといいますけれども、年金の積み立て金の基金が250兆円あるといいます。郵便貯金と簡保で360兆円あるといわれています。これがあまり有効に、将来の日本の発展のための投資がされていないんです。こういうことをどうやるか。郵貯・簡保を株価を高めるために使おうという話は一部出始めていますが、単に短期的なことではなくて、中期的に日本の経済の基盤になる戦略的な投資にどうそれを使うか、これがやっぱり問われている。そこら辺はまた別の機会にお話したいと思うんですけれども。そういう知恵が問われているということだと思います。
(文責:ささき竜三事務所)