聞き手 今日は、私もずっと気になっているんですが、食品の話、食品表示の話についてですね。
食品表示の信頼性は?
笹木 食べ物の、食品の安全についてということです。5月下旬に食品安全についての基本法という法律が通りました。まあ安全にこだわる方というのは、産直運動をやっていたり、もちろん元々いらっしゃるわけですが、食の安全とかにこだわる方の中には、子供がアトピーであったりとか、あるいは喘息であったり、そういう方も多いようです。もちろんこれは食品汚染だけではなくて、大気汚染とか住居が変わったとか色々あるんだと思いますが、ただそういう方々と雑談していますと、産直の物を買ったりはするけれども、表示がどの程度信頼できるのか。ここらへんもあまり保証がない、という意見も聞いたりします。今回通ったこの食品安全基本法というのは、いつ・どこで・誰によって・どのように・作られたかという食べ物の、食品の来歴を追跡できるようにする。まあ認識番号とかでやるんでしょうけれども。ちゃんとそれが表示されるようにすると。これが一つ、大きい点なんです。ですからその表示の信頼性ということ。これはやろうということで、まあ前進だろうと思うんですね。ただ、そういう関係の流通の方と話していますと、結局それコストは誰が払うのかと。店で、例えば番号だけあってもこれでは分からないと。お客さんの方から色々問い合わせとか聞かれたりすると。だからおそらく店の中にもパソコンを置いてとか、その表示の識別番号で調べることが出来るようにするとか、そこまで売る店としてやらなくてはいけなくなるのかなとか、色々な話があります。まあそういう場合に、今回の一番の問題というのは、輸入物には全く網がかかっていないということ。狂牛病のこともあってこういう法律が通ったんですが、国産の牛肉に対してはなるべく詳しく、DNA鑑定も含めてさかのぼれるようにするという体制になりそうなんですけれども、輸入の牛肉は対象になっていないんです。
輸入食品は殆どチェックされず
牛肉だけではなくて一般の食品についても6割が日本は今輸入です。これも検疫体制がすごいお粗末で、中国の冷凍ホウレンソウですか、残留農薬。これが結局問題になりましたが、こんなもの全然チェックされなかったんです。もう素通りで入ってきてしまっているわけです。それは何故そんなふうに素通りしてしまうのかというと、検疫体制というのは、まあ人手も少ないんですが、だいたい入ってくる量の2%いくかいかないかなんです。100のうち2つぐらいしかチェックできていないんですね。で、残り98は実質全く把握できていないような状態といってもいいんです。だから非常に危ない。これを放っておいて、一方では国内の物については非常に厳しくやる。さっきいった色々、識別番号もやる、その為の色々な設備投資もする。作る側もそれでいろいろ手間がかかりますよね。国内産のものについてはそうすると。で、輸入するものについては比較的、あまり変わらないと。そうなると価格競争で国産の物が不利になるわけです、結果的には。その可能性があるんです。今、経済もデフレですし、そうすると一般で買う方の中にはやっぱり安い方がいいという方も増えるわけですから、ますます国産の物が不利になっていく。ここをどうするんだというのが非常に深刻な問題なんです。食料の話で以前ちょっとお話した時に、もう今、食料の輸入国がどんどん増えていて、輸出国というのは非常に少ない。アングロサクソンという話はよくしますが、アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア、ニュージーランド。このアングロサクソンのカナダとかニュージーランドとかオーストラリア。この、もう数カ国しか完全な輸出国というのはないんですね。
食品の生産、流通の大規模化
で、いろいろ何でもこの食品の流通というのはどんどん大規模化して、例えばマーケットでもどんどん大規模化して、大きいところだけが残る。小さいところはどんどん少なくなっているというのがあります。作る側もそうでして、まあこれはちょっと広い話、世界中での話になりますが、コーヒー豆ありますよね。あれはもう実質今アメリカ系の2社が、おおもとは全部仕切っているらしいです。そのおおもとの仕切っている2社が価格決定権も完全に持っていますから、あるコーヒー豆を作っている国は、この10年でだいたい1/2以下に、そのコーヒー豆の値段を下げられているらしいんです。もうコーヒー豆にほとんど、国の色々な生産を頼っているその国はGDPまでこの10年で1/2になっているということがあるんです。ですからもう流通も生産もどんどん大規模化というか、その大きい流通に仕切られていく傾向があるんです。しかしずっとそれで安い物が確保されるのか。安全面はすごい不安がありますし、安い物が確保されるのかというとそれも不安があって、あと20〜30年すると、特にアジアを中心に食料不足になるとも言われています。
聞き手 そうですね。結局自分達の国で作っている物が作りづらいというか流通しづらい状況だけ作っていることになっちゃいますね。
笹木 だからそこをよく考えないといけない。例えばヨーロッパ、アメリカとヨーロッパというのは貿易摩擦、この食品の安全をめぐってかなり摩擦があるんです。成長促進ホルモンを使った牛肉、この輸入をヨーロッパは禁止しています。で、アメリカは入れろ入れろと。何で禁止するんだと。それで摩擦がおきる。
今後の貿易摩擦?
−成長促進ホルモン、遺伝子組み替え、ポストハーベスト、体細胞クローン牛肉−
遺伝子組み替えの農産物。例えば除草剤に強いような大豆とか、害虫に強いトウモロコシとか。こういうものもヨーロッパは入れるのにかなり厳しくしているんです。遺伝子組み替えやった場合には最低でもちゃんと表示しろと。これに対してもアメリカはどちらかというと、そんなうるさいこと言わずにと。表示もそんなに厳密にいう必要ないじゃないかといって、入れろ入れろという動きがあるわけです。
聞き手 害虫に強いトウモロコシは虫が食べたら死んじゃう。虫は死ぬけど人間は死なないというのがアメリカの言い分だって聞いたことがあるんですが、アメリカ人は食べているのかな、普段。自分達は食べているのかどうか、出すだけ出しているのか、その辺がよく分からないですけれども。
笹木 特にポストハーベスト、収穫後の農薬なんかについては、出しているものに特に甘いといわれたりもします。そんな問題があるので、日本ももう少し外から入ってくるものに対してちゃんと厳しくしないとかなりまずいんじゃないかっていうことです。で、ここでじゃあどうするかということなんですが、さっき、その2%しかちゃんとチェック出来ていないという話がありました。その一方で今度食糧庁というのが廃止になって、福井県なんかにも食料事務所というのがありますよね。結構たくさんの職員の方がおられます。食糧庁が廃止になって、この食料事務所も廃止になる。これ全体で8000人いるわけですけれども、全国で。その内4000人を今回、食の安全とか管理部門に関わってもらうようにするということになったんです。じゃあその人達、一体何をするのかあんまり詳しくまだ分からないんですが、こういう人の人手も含めて、結局輸入物に対して検査体制を厳しくするしかないんじゃないか。これがひとつです。あと課題でいうと、体細胞のクローン牛肉、これは世界中でまだちゃんと流通してもいいよと許している国はどこにもないんですが、今のところ日本で厚生労働省はまあ問題ないんじゃないかと。流通してもいいんじゃないかという方向になりつつあるんです。だからやっぱりこれも大丈夫なのかという感じがします。まあさっきいった食品安全基本法というのが出来て、これから安全委員会という所でこの遺伝子組み替えの食品とか、体細胞クローンの牛肉とか、あるいは食品添加物の問題とか。どこまでがOKでどこから駄目だという色々な指針というか方針を色々調査しながら出してくることになると思うんです。これは7月以降にそういう活動が始まりますが、やっぱりどれだけ厳しい体制を取れるかだろうなと思います。そうしていかないといけない。そうなるかどうか。今それが注目されているという状態なんです。
聞き手 なるほど。よくよく考えるとアメリカの農業って工業、食工業というようなところがありますよね。
笹木 ものすごい大規模化ですよね。
聞き手 大規模にやってしまうと、もう農業という範囲ではなくて、生産、製造している、そういう意味合いもあるのかなと思います。あそこまでやろうと思うと、どうしても遺伝子を組替えたりとかしていかないとそれだけの量を確保することが出来ない。害虫や気候といったリスクを背負いながらできるような産業ではなくなっているのかなという気はしないでもないですね。
笹木 そうですね。それとアメリカは何か外国と紛争とか摩擦があると、食料を経済制裁の武器にしたりするわけです。それはしょっちゅうやります。さっきいったように最終的には一番人間にとって基本的な物ですから、これがやっぱり戦略的な手段になるという、アメリカはそれもあるんです。だから絶対食料については輸出国であり続けているということなんですね。イギリスなんてのは第2次大戦後どんどん自給率を上げてきているんです。日本は逆に、同じ島国でも第2次大戦後どんどんどんどん自給率を減らしているんです。先進国の中でも最も自給率が低い国になってしまったんです。ちょっとそういう、食というのは安全とやっぱり生命の基本だという感覚が少なくなりすぎている。問題ありますよね。
聞き手 そうですね。何故食べる物にこれだけ無関心なのかと思う時はあります。先程の話の中にあったポストハーベスト。バナナの輸出国なんかがどうやって輸出しているか見てみるとぞっとしてしまいます。アメリカンチェリーやイチゴなんかもそうかもしれないです。つまりは農薬を張ったプールの中にポチャンと浸けるんですよね。そうすることで本当だと1週間もするとしなびてきて当然の物が、2週間経っても3週間経っても新しいまんまだと。怖くなってきますよね。
笹木 人間の体も似たような状態になるんですかね。
聞き手 そうですよ。レモンにしても最近は皮に非常に農薬が強い。産地によっては、そのレモンを熱帯魚の水槽に浮かべたら、熱帯魚は全部死んじゃうというふうな事が起きるんだそうです。そういう物を日本の人達は平気で、まあもちろん皮を食べるわけでは無いといえばそこまでですが、買って消費しているわけです。日本はすごく高温多湿のカビの生えやすい、物の腐りやすい国ですから、食べる物を匂いで腐っているかどうか判断できる能力も身についていただろうし、あるいは食物を保存する為の知恵も色々もっていたわけですよね。醗酵させたり、糠漬けや塩漬けにしたり。最近は保存料というものに頼ってしまったり、あるいは賞味期限というものだけで判断したりとか。なんかそういう人間独自の能力というのがどんどん失われているような気もします。
笹木 そうですね。私もそう頻繁ではないんですが、美山で赤かぶら、これ全国的にも珍しい、中も赤いかぶらですごく美味いんですけれども、この焼畑の体験農業的なことを実際やってみたりすると、まあ色々なことが分かるんです。でも一番問題なのはやっぱりさっきの流通の問題。せっかく自分達が作ったと。で、それをじゃあ色々な人に少しでも流通したいと思っても、出荷量は少ないですから、大きいマーケットでは扱ってもらえない。だからますますジリ貧になってしまう。だから産直で安全なものがどうマーケットの中で位置付けが出来ていくか。ここを考えていくべきなんでしょうね。
聞き手 なるほど。食のことに関しては、色々とまだまだ問題がありますし、色々教えて頂きたいこともあります。まずは今日はちょっとその入り口ということで。
笹木 また夏以降この動きがあると思うんで、別の機会にお話したいと思います。