| 聞き手 今日は雇用の話をということですが。
笹木 福井県内でも大手の企業が希望退職者を募ってということで、100人・200人規模、これがどんどん進んでいるとか、フルタイムの社員がパートとかになるとか、派遣会社からの人が増えるとか、すごい変化があるわけです。雇用対策とか色々なことをやってもいます。そんな中で、私自身はみずから好まずに環境が変わっているんですが、鳴尾さんは自分から望んで脱サラして、自分で起業された、業を興したということですよね。そういう環境が変わった方にとってどういうことが必要なのかという事だと思うんですが、職場環境・生活環境。鳴尾さんなんかどうですか。自分で会社を興されて。
聞き手 もちろん、社会環境もそれにまつわるシステムもちゃんとしていかなくてはいけないんでしょうが、要はもう気持ちの問題。最後には根性論になってしまいます。子供の頃から教育の中で学校へ行って、就職をして、ずっと勤め上げるというのが当たり前の国ですよね、日本というのは。実はそれが唯一の方法じゃないんだということに皆さん気がついていないというところがあるんじゃないかなという気もしますね。
笹木 どんどん変わっていくでしょうね。職場が変わることもあるし、最初学んだことだけでは通用しないことがどんどん増えているということですよね。まあ色々な、例えば緊急地域雇用創出特別交付金とか、要は雇用対策ということで、去年一昨年から色々な試行錯誤はされているんですけれども。でも極端に言ってしまうと、行政、役所の中で臨時の職員を増やすとか、役所のお金で民間に託してそれで臨時の雇用を増やすとか。もう直接雇用に関わるということです。具体的にいいますと、ちょっと前、3〜4前には公民館とかでIT講座というのがあって、ある程度高齢の方でも中年の方でも主婦の方でも公民館でコンピュータとかパソコン、インターネットを習える。そんな講座をやっていました。今こういうパソコンのサポーターというのを、そういう相談窓口で、要はパソコンの指導を民間で、例えば職を失った方とかそういう方にやってもらう。学校で総合的な学習というのがありますが、あそこで非常勤の講師として色々な世話をしてもらう。あるいは小学校の低学年児童で授業が成り立たないとか、あんまり先生のいうことを聞かない児童も最近増えているとかっていいます。その世話をするとか。あるいは放課後のスポーツとか預かりとかそういうこともいろいろ学校の中で、小学校で指導もするとか。そういう臨時の職員を雇ったりする。あるいは園児の夜間とか延長保育のその為の人手として増やすとか。もっと一般的なのは、草刈りですとかごみ収集とか植栽とか、そんなことも含めて福井県内でも県としても市町村としても国としても、こういうことで色々な雇用を増やそうということで、まあ苦肉の策ですが、色々やっています。
聞き手 あまり我々が雇用だという意識の無いような分野が多いですよね。
笹木 どちらかというと行政が、普通は公務員としてやっているという分野です。
聞き手 そうですね。一般の人達が雇用と聞けば、なんかイメージとして会社勤めという感覚を持ってしまいがちなんですけれども。
笹木 まあ簡単に言ってしまうと、民間の方に雇用を増やしてくださいといっても、今経済が非常に厳しいし、お金があんまり回っていないからなかなかすぐには改善されない。失業された方を、あくまでも緊急な対策として、直接行政で抱え込むみたいな例がかなりあるということです。しかし、これは今のところあんまりうまくいっていないんです。あくまでも臨時職員で、それがきっかけで「あっ、こういう仕事があるのか」とさっきいった教育に関わる仕事とか、あるいは環境に関わるとかITに関わる仕事、行政が最初そういうことをやって人材も育って、あるいはそれで民間でも成り立つということで、それで新しい職が増えていけばいいんですが、まったくそういう形には今のところなっていない。さっきの話でいうと、学校での非常勤講師。これは将来的にどんどん増やしていくことになるかもしれません。学校の色々な関わる方。だからこれは将来的な雇用につながるかも。これは行政の中で、行政周辺の雇用ということで増えていく可能性は有るかもしれません。しかし、他の雇用対策も含めて、それがうまく効き目があって、その後の正式な雇用としてどんどん成功したという例は少ないんです。これは非常に苦労した例で、ある県では企業がその県に誘致した研究所とか工場がくるという場合に、昔だったら税金を安くするとか、そんな程度だったんですが、もう直接現ナマ、お金を渡すと。そこまでして県での雇用を増やそうということをやっている、頑張っている県もあります。
聞き手 究極の企業誘致ですね。
笹木 そうですね。まあ色々な苦労をしているということです。しかし全体的にどういう傾向かということをやっぱり考えることが必要で、よく産業構造なんかの変化というのは先進国、アメリカ・ヨーロッパの後を追うような形で日本もだいたいそういう形できているといいます。アメリカはこの10年で、雇用は1,000万人増えた。サービス業関係で1,000万人増えたといわれているんです。その内訳というのは、子育てであったり教育であったり福祉、まあ日本でいうと介護も含めてです。そういう分野が600万人だといわれているんですね。だからこういった分野でどんどん新しい技術を身に付けるとか、こういうことが絶対必要なんだと思います。今非常に好評なのが、というか絶対これからこういうのをやらないといけないといわれているのが2つあって、1つは大学とか大学院での学習、研修です。今までは専門学校とか専修学校での研修に補助でお金を出すとか、授業料の一部を出すとか、これが雇用対策としてされていたわけですが、大学・大学院で学ぶことについても助成をしようと。これが始まって、これ結構好評なんです。しかも一応まだ数は少ないんですが、それで助成を受けて貿易のことを学ぶとか、福祉専門の大学にいって福祉分野の色々な免許を取るとか、あるいは環境のことを学んだり、マーケティングを学んだり。そういう学習をして、それで再就職につながっているのが5割ぐらい、今のところあります。まだ数は少ないですが。これが1つ、これからもっとやっていく、色々試行錯誤しながら考えていこうということ。もうひとつはさっき色々雇用対策でうまくいっていないと言いましたが、何がうまくいっていないかというと、結局、企業側は今までの経験とかが何かということを求めるし、即戦力を求める。じゃあ働きたいと思っている側はどういう希望が出るか。その労使双方の必要度というか気持ちを意識した上で最初からこう研修を始めていくとか、そういうのがあまり無いんです。これを今、全国的にコミュニティカレッジ、また横文字ですが、全国の県でそういうのも作っていって、労使双方の気持ちを最初から把握した上で、必要を把握した上で研修とか教育を始めていこうと。これが2つ目です。これがこれからどんどん始まっていくんだろうと思います。しかしそれにしても、さっき大学とか大学院で学ぶという話がありましたが、韓国が非常に今経済がいいといわれています。97年の頃は日本よりもどん底で、99年ぐらいまでどん底だったけれども、今、年の成長率が4%、5%と。ひとつは不良債権処理とか銀行にお金を入れるときに、今まで古いやり方をやっていた人を全部責任者を入れ替えたということがあります。もうひとつはインターネットを使ってでも大学の授業を受けられる。インターネットを使って色々な学習がやれる。それをまた職業訓練とか学習、就職に活かしていく。この流れがかなりうまく出来たといわれています。こういうことをやっぱり日本としてもやっていくべきなんでしょうけれども。考えてみると日本が近代化で成功したという幕末の頃、外国の人が色々言うんですが、何が他のアジアの国に比べて違ったか。やっぱり教育だと言うんです。全国津々浦々に寺子屋というのがあって、読み書きそろばん、これはもうあの頃一番先進国といわれたイギリスよりも普及率が進んでいた。それと心の学問、石門心学というか社会貢献のための学問。これも非常に普及していたと言われるんです。その後で、和魂洋才で西洋の技術もさらにどんどん取り入れようという教育をやりました。小泉さんがよく米百俵というエピソードで、今のことよりも将来のために我慢しろと。幕末の時に戦争で負けた長岡藩がその後、米百俵を親戚の藩からもらったけれども、これを今のことに使わずに、将来のために使ったと。だから構造改革が大事で我慢しろという話によくなるんですけれども。これやっぱり方手落ちなのは、幕末の頃から明治にかけて、世界の中で一番学ぶ場とかさっき言った普及率高かった話しましたが、この米百俵の長岡藩の場合にも、和魂洋才で西洋の技術を取り入れた教育を一番早く米百俵を使って学校を作ったわけです。だから日本がこれから長生きの社会になって、しかも賃金が一番高い国になって、その中でどういう生涯教育をやっていくか。職場も変わる可能性がどんどん高まっている。最初学んだ義務教育、大学教育で学んだことだけではもう足りなくなる。そんな中で生涯の学ぶ場をどう作っていくか。これが国・県・自治体もう公的な機関に求められることで、将来的に新しい産業構造の中での雇用対策というのは、やっぱりここを避けては通れないんだろうなという気がしているんです。
聞き手 学校で学ぶことと企業の求めていることのズレというのも痛切に感じます。昨日春江工業高校の先生と話をしていたんですが、それぞれの科、電機科、自動車科、ナニ科っていろいろあります。ところが自動車科で学んでいるから自動車のメーカーに入れるかとか、そういうのが直結しなくなっている。昔はその科で学べばその分野の企業に入れたのが今ではくずれてしまっている。というのをその先生がおっしゃっていたのを聞いて、教育というのが戦後50年の間に構築してきたものというものがだんだんと実社会とずれてきているのかなって少し感じます。
笹木 そうですね。まさに今のお話の通りで、例えば建設関係のトラック運転手、これ非常にリストラの対象になっている方が多いんですが、一方では介護タクシーの雇用は増えているんです。しかし現状では建設トラック運転手だった方が介護タクシーのための色々な研修をうける場はあまり無いんです。今の話と同じように縦割りの研修では駄目なんですよね、多分。
聞き手 どれだけ横をにらんでニーズにあった教育というものに即応できるか。雇用と教育というのを結び付けて考えないとっていうのは、なるほどと感じます。
笹木 さっきいったコミュニティカレッジにしても、大学とかあるいはインターネットでの研修、そういうこともいろいろ始まってきていますので、またいろいろ成果とか総括が出てきたらご報告したいと思います。 |