| 聞き手 少子化などについて以前お話いただいたと思うんですが、少子化だけでなくて、今日本の人口が減り続けていることのひとつの原因としては、若くして亡くなる方が多い。日本人の平均寿命は長いというふうに発表しています。嘘ではないんでしょうけれども、それでも今の平均寿命を支えているのは戦前に生まれたような方々なわけですよね。
笹木 非常に体を鍛えていた方。あと健康な食を取られていた方。
聞き手 そうですよね。戦後生まれの人は色々な病気でお亡くなりになる確率が本当に他の国と比べても高いんじゃないかという気がするんですが。
笹木 確かに僕と同世代とかでも急に膠原病になったとか、あるいは40代前半で癌になったとか、結構あります。今日はこの癌の、例えば死を避けるための治療という、その体制という話をしたいんですが、本当に自分の友達の経験でもそういう40代前半で癌になるとか、大腸癌になるとかそういう方もいます。不治の病とちょっと前まではいわれたわけですが、かなりどんどん治療は進んでいるんですけれども、この福井県に、全国で6番目、それは全国で一番最先端の癌センターですとか筑波、そういう所も含めて6ヶ所あるうちのひとつとして、この福井県に陽子線治療、重粒子陽子線治療の施設があるんです。簡単に言いますと、癌になると治す方法というのは大きく3つあって、手術でその癌のところを取る。2つ目は放射線。3つ目は化学療法、抗がん剤です。抗がん剤は結構副作用が大きいとか、手術の場合にはそこを取ってしまいますから、現状復帰じゃないわけです。放射線はその代わり健康な細胞を破壊したりするとか、命中率がいまいちよくないとか、色々な問題があるわけです。で、この陽子線というのは放射線に比べて非常に命中率がいいんですね、簡単にいいますと。だから健康な細胞を破壊しない。で、体の深い、難しい場所で手術ができないという場合でも、この陽子線でうまく命中させることが出来ると。これは元々だいぶ前から私も働きかけて、こういう施設を福井でというのは、エネルギー関係といいますと、よく原発事故とか放射性廃棄物の問題とか放射能漏れとか、あまり明るい話じゃない話が多いので、こういうエネルギー関係で明るい話ないのかと。で、こういう医学にエネルギー、これ陽子線というのは水素原子の中にある陽子に加速器、要するにすごい速いスピードにする加速器をかけて光速の6〜7割の速さにするらしいんです。そうするとこの陽子が速いスピードで動いていくんだけども止まる直前の時だけすごいエネルギーを発するらしいんです。これを使って今のがん細胞にうまく当てると。しかも事前にコンピュータで色々シュミレーションできますから、この場所に当てるというのはこうやると一番命中率がいいようにすると。誤差が1mmということなんですね。命中率が非常にいいんです。実際に福井でも治療が始まっていまして、去年の5月から今年の6月一杯までで、まずは6人の方、前立腺とかそういう癌ですが、福井県立病院も窓口になって、敦賀病院で治療を受けるということです。福井は全国で6ヶ所目ということですが、これは研究ということで今やっている。ですから無料です。この陽子線治療の範囲をどこまで広げられるかという研究、という名目なんですね。来年は1年間に10名やろうとしている。さらにその先では年間に50名ぐらいの方でやろうとしていて、今は前立腺とか、あと骨肉腫とか頭頸部とかですが、さらに肺とか肝臓とか、それも出来るようになっていくだろうということなんです。
聞き手 日本国内にあるほかの施設では無料ということではないわけですね。
笹木 それはもう治療ですから有料です。で、ここでやっぱり問題がありまして、非常にいいんですが、結構施設が高いわけです。数十億円するわけですね。だから治療でその分を回収しようとしていくとどうしても値段が高くなる。いくらぐらいかというと、今福井でやっているのは実際にお金を取ろうとなるとまだ6名とか、来年も10名ですから、一人当たりのコストが600万円くらいかかっているらしいんです。ただ他の都道府県で静岡や群馬、治療をやっている所やこれからやろうとしている所ではもうすこし人数も多く、研究ではなく治療としてやりますから、300万円らしいんです。これは保険が利きません。ですから本人が300万円払うしかないんです。ここがまあ難しい問題ですが。しかしそれでも人気があって、今言ったように健康な細胞も破壊されない、抗がん剤みたいに非常に苦しい思いもしなくていい。むしろ治療をやっている間で太った方もいるぐらいで、もう普通の日常の生活。すごく短い時間、1回2〜3分当てるんです、陽子線の治療。これを一ヶ月半ぐらいから2ヶ月の間に20数回やる。だから2〜3分を20数回別の日にやるらしいんです。だから受ける側として非常に楽らしいんです。だから300万円でも人気が、まあその300万払う方にとっては非常に人気があるということなんですね。
聞き手 実は、若狭湾エネルギー研究センターはうかがったことがあります。何でこんな大きなシステムが必要なのかなと思っていたんですが、小学校のグラウンドまで行かないですけれども、幼稚園のお遊戯場ぐらいの広さの所に一本の筒がこうグルッと張り巡らせてあって、そこをその陽子線、原子の中のひとつの粒がビューンって飛ぶ。走るんですよね、幼稚園の園庭を。どれぐらいの速さで走るといったら、光の80%近い速度まで達する。それを癌のある部所にポンと命中させて治すと。
笹木 そうですね。こういう加速器というのはすごい色々な技術があるみたいで、今かなり広い校庭を陽子が走るといいましたが、播磨、神戸の方にある施設ではそれをもっと大きくしていくわけです。播磨の場合どのぐらいでしたかね。半径が1.5Kmでしたか。ものすごい大きさです。これは治療だけではなくて、これで加速すると今度は何でもよく、分子とか原子の構造がよく見えるようになるらしいんです。
聞き手 そういった研究にも使える。
笹木 だから今までは理論的に考えていたことを、もう実際に目に見えてしまう。分子とかの構造まで。そういう研究にも使えるんです。まあ若狭エネ研でも治療だけではなくて、さらに、ちょっと話はそれますけれども、材料ですね、この加速器で陽子を当てたり速い速度にさせたりすることで、材料に変化を起こす。今半導体の弱点を克服するような研究もしたりしているみたいです。
聞き手 色々な可能性があるんですね。今日は健康をテーマにということですが、こういった施設を使ってがん治療というのも行われているんですけれども、なかなか一般的にならない。そういうところが課題ですよね。
笹木 そうですね。結局最先端の治療というのが、この陽子線に限らず色々な、最近は抗がん剤も非常にいい物がどんどん出て来ていますが、これもやっぱり結構高いです。保険が利かない。遺伝子治療もおそらく癌対策でどんどん進むんでしょう。でもこれもやっぱり高いです。これから癌治療は非常にいい技術的な可能性で広がるけれども、コストが高くついているというのがひとつの問題です。もうひとつ、まあ死を避けるということで、救急医療ということでいいますと、これ私の友達がその専門の医者ということもあって話を聞いていますと、突然死の中で心臓の突然死が6〜7割らしいんですが、心肺機能が停止してから5分以内が勝負らしいんです。心臓が止まってから5分以内に電気ショックかけたり、ちゃんと治療するとまた戻る可能性が高いと。それがもう5分過ぎてしまうと駄目で、普通救急車で運んでもやっぱり10分ぐらいかかってしまうわけです。だからそういう設備がしっかりある所まで行くのではなくて、運動をやっている場所とか人がいっぱい集まる場所、あるいは飛行機の中とか新幹線の中、そういう所でとりあえず電気ショックをかけられる、その為の簡易な機械があるようで70万円ぐらいらしいんですが、これは素人でも扱いがそう難しくない、かなり自動的に判断もするような機械らしくて、これをアメリカではカジノでも警備員がやるということらしいんです。
聞き手 じゃああれですか、スロットマシンで大きいのが出て心臓麻痺をおこしちゃって。
笹木 そうですね。その時に警備員がすぐやれますから。そうするとだいたい60%ぐらいの方が生き返っていると。
聞き手 カジノにとっても心臓麻痺で年間何人亡くなられますっていうよりはちゃんと生き返られる方がおいでになるほうがいいわけですね。
笹木 結構高齢の方も当然来るわけですしね。
聞き手 このあたりは石原慎太郎さん率先して日本でも導入しなくちゃいけないですね、前もって、まずこういったところから。
笹木 ただ日本では今生き返っている率が2%とか3%で桁が違うんです。これ何が一番問題かというと、アメリカではカジノで警備員がやれる。あるいは飛行機の中では乗務員も出来ると。日本ではやっぱり医者の方以外はこういうものを扱ってはいけないということになっていますから。
聞き手 法律でそうなっているんですか。
笹木 そうです。ただ例外はやっぱり認めるべきじゃないかということで、ようやく今日本航空、JALの中で乗務員がやってもいいとか、救命士はやってもいいとかなっているらしいんですが、まだ看護婦さんがやっていいとはなっていないし、あるいは家族とかが出来るようになれば非常にいいわけです。まあ運動公園とかにこの機械を置くようにはなったらしいです。しかしそれを誰がやるんだということになると、この問題がある。
聞き手 運動公園にお医者さんがいないと意味が無いというようなことになるんですね。
笹木 そうです。これが救急医療で、突然死、心臓死の場合にはこういう簡単な作業で、素人でもちょっとガイドさえあれば出来るようなものを医者以外が出来るようにしていくこと、これが1つの課題ですよね。
聞き手 先だっても自衛隊が有事のときに赤信号で戦車を止めなくてはいけない、そんな矛盾した法律は変えていかなくてはいけないというふうな話がありましたが、これも同じような問題ですよね。
笹木 そうですね。制度がね。よくあります。介護でもよく似たことがあるみたいですし、医療でも。制度が時代に追いつない、あるいは技術に追いついていないということですね。 |