| 聞き手 先週のお話は国民投票のお話でした。
笹木 国民の直接投票というのを、先進国、ヨーロッパやアメリカでは常識のようにしょっちゅう行われていると。日本は国政全般での直接投票というのは一回もされていないという話をしました。で、これ考えてみますと、先週の話からの続きなんですが、選挙が、衆議院だったら4年以内に総選挙がある。参議院だったら6年ごとにあるということですが、例えば、ある政治家を選んで投票したとか、信任したとか、あるいは政党をそれで与党にしたとかっていうこともあっても、その政治家とか政党が掲げている政策全部OKだといっているわけではないんですよね。でも相対的にこっちよりこっちがいいという、AよりBがいいということで例えばBが当選するとか、その政党が与党につくと。その掲げている政策の中では国民としては反対も賛成もあるということで、しかも4年間ほとんどコミュニケーションがないというか、会話が無いというか、任せっきりの状態になってしまう。しかも最近は後援会とか、政治家と国民との関係が非常に限られた団体とのやり取りしかないということもあって、やっぱり国全体の大事な、大きなテーマは国民投票でちゃんと決めるということが世界的には当たり前になっているんだけれども、日本では当たり前になっていないところがかなり問題だという話をしたわけです。
聞き手 本当におっしゃるとおりで、政治家選んじゃうと後はもう任期までよろしくお願いしますよと放ったらかし。税金納めちゃうともうあとはちゃんとやってくださいよと納めっぱなしでチェックもしない。日本人のよくないところですよね。
笹木 そうですね。これがどこからきているのかということなんですが、例えば40年50年60年経ってくると社会の状態はがらっと変わってくる。民主主義というのはその古くなった制度を、時代の中で古くなったものは壊して、新しい物を造って行く。これがよく民主主義といわれるわけですが、日本の場合には憲法自体が戦争で負けて、占領軍でアメリカから作ってもらったと。これはこれで仕方がない事情があったわけですが、それもあってお上意識といいますか、国の一番大事な、本当は自分たちでそれこそ手続きとって国民自らが作っていく国の大原則も外から与えられたと。これもあって、それこそ江戸時代そして戦前からずっと続いているお上意識が結果的に残っているんではないかと。憲法改正についていいますと、一回ももちろん憲法改正していない。ドイツは48回、アメリカも18回憲法改正している。日本は一回もしていないし、手続きのことさえ細かく決められていないということなんです。ですから、提案の要件、例えば何人以上の議員で提案できるか。これも具体的に手続きの法律は決まっていません。衆議院・参議院それぞれの2/3の議員と国民の過半数の賛成で改正できるということだけは憲法に書いてあるんですが、これもじゃあ過半数というのは、投票した有効投票の過半数なのか、国民、20歳以上の国民全体の半分なのか、そういうことも具体的に何も決められていない。だから憲法改正するという前提さえないんです。アメリカでもフランスでも議員1人で憲法改正の提案は出来る。そこから議論が始められるようになっているわけです。
聞き手 たった一人が提案するだけでもうそこから議論が始まる。
笹木 そうです。ですからこれは国全体にとってすごく大事な問題だと考えれば、議員が1人ででも提案できて、そこから動きを始めることが出来るということです。片や日本では具体的にどう変えたらいいのかという手続きの法律さえ全く無いということなんです。で、どんな問題があるかということなんですが、例えば50年60年前、1940年代に比べますと、環境の問題というのは間違いなくあの頃は殆ど問題になっていなかったわけです。今、環境破壊とか環境をどう守るかということがありますが、科学技術の進歩とか技術の進歩、生産力の進歩、もう全く50年前60年前とは違うわけです。よく最近は環境の問題で裁判があったりしますが、例えば企業の営業の自由、あるいは財産権とかそういうものとの対立となると、憲法の中にちゃんと営業の自由とかは認められているわけです。環境権というのは権利として認められていない。だからこういうところでどうしてもまだまだ環境権が社会の中で弱いという面があります。こういうことはちゃんと憲法の中で位置付けていくということが必要ですし、以前お話しましたが、食の安全という話をしました。食品の安全。国内の食の安全については最近法律も出来て厳しくしようということになったけれども、外国から入ってくる輸入農産物とか輸入の牛肉については全く制限されていない。どんどん外から汚染された食品とかが入りたい放題でまだ入ってくるのを防げていない。これはその時もお話しましたが、外国との貿易摩擦、特にアメリカとの関係でいうと、それに対して厳しく枠をかけると、まあ普通日本の商品いっぱい買ってもらっている代わりにそういうのをアメリカからいっぱい入れないといけないという、外交的な色々な対立にもなるわけです。そういう所でどうするのかということはこれやっぱりすごく大きい問題です。国民自体も判断しないといけない。だから環境とか食の安全については日本はやっぱり厳しくやると。徹底的に安全を追求するんだという選択をするのであれば、ここらはちゃんとやっぱり環境権と共に憲法のなかで謳っていくとか、こういうことも必要だと思うんです。あと、これも以前取り上げましたが、プライバシー権の問題。エシュロン計画といって、今はアメリカとかイギリスとかカナダとかオーストラリアが組んで、経済的な情報を取るために、外国、日本も含めてですが、もう個人の色々な経済情報とか活動情報、企業の情報も平気で盗聴とか盗撮しているという話をしました。こういうプライバシー権をどう守るかというのも全く、まあ今に比べて50年60年前にはこんなに情報社会が進んでいなかったし、その技術も進んでいなかったわけです。ですからどう守るかというのははっきりと宣言していないとなかなか守りきれないということがあります。実際ドイツなんかは国内での、これは日本でも色々そういうことがありますが、犯罪を取り締まったり、犯罪の色々なことを調べるために、盗聴とかって認められていますよね。これもじゃあどこで折り合いつけるのか、どこまで認めるのか、どういう原則で行き過ぎを止めるのか。こういうこともドイツの場合憲法まで改正してちゃんと原則決めているわけです。そのぐらい今情報社会というのは影の部分ですごい管理社会になって、悪用されると全部見られてしまう可能性があるわけです。
聞き手 先日、東京都の石原知事がおっしゃっていましたよね。防犯のために歌舞伎町にいっぱい監視カメラつけるぞと。そういうことなら分かるんですが、本当に知事の権限でそんなことやってしまえというようなことが出来る国なわけですね、考えてみると。
笹木 そうですね。ほとんど何も原則が決まっていないわけです。それとまあ名誉権というのもあると思うんです。例えばこれはメディアであったり、いろんなところも含めてですが、結構平気で間違っていることでも報道してしまう。それをなかなか行政とか国会の方で監視しようとすると表現の自由との関係で結構難しい問題がある。でもこの名誉権、個人の名誉をどう守るのか。間違った報道の場合はどのぐらいちゃんとそれが間違っていたということも含めて広く報道するのかという保証も今ないわけですね。こういう問題もあると思います。知る権利というのもあると思う。こんなこともあるんですが、もうひとつ一番よくいわれる、例えば自衛のための戦争という問題です。これ非常に面白い話ですが、昨日、イラク復興の法案と、本当は一緒にテロ対策特措法、これは2001年に一度成立しているわけですが、期限が切れるんで延長のための手続きをしないと駄目なんですが、2001年に通った時に、私が時々話をしている方で、自衛隊で実際に潜水艦とか乗っている人ですが、あのテロ対策特措法でインド洋とかに出て行く。で、アフガニスタン、アルカイダとかタリバンとか、そのテロの対策でアメリカとかヨーロッパの軍隊と一緒に、まあ海軍が連携するということで派遣すると決めたんですね。その海上自衛隊の方が、自分達は仕事柄、何かあったら命をかけてやらないといけないという、その覚悟はもちろん出来ている。しかしあの法律で行かされると何も出来ない。
聞き手 何かあったら死んでしまえといわれているような部分がある。
笹木 そうなんです。普段から色々な攻撃を受ける可能性もある。そういう何か危険なことが起こったらどうするかといったら、何も出来ないんです。逃げて帰るしか無い。逃げられればいいですが、実際に戦闘活動できないということで、法律的には決まっているんです。で、だから、あの時に言っていたのは、イージス艦、でかい軍艦は、非常に冷房の設備が出来ていて自衛隊にとって非常に快適なんだとか。あとたくさんコンピュータがあるから通信に便利だとか、そんなことを言っているんです。でも外国から見て、もうこれはアメリカとかヨーロッパの多国籍軍と一緒に海軍が連携して戦闘態勢をとってアルカイダ対策、タリバン対策をやっているんだと、外国からはそうとしか見えないわけです。で、それをクーラーの設備が出来ているからとか訳のわからない理屈で、これは集団的に一緒に行動しているんじゃないと言い張っている訳です。これがどこから来ているかということですが、憲法が出来た時に、最初は占領軍は日本には自衛のための交戦権も認めないという、そういう規定にしているんです。今なんとなく自衛はしょうがないんじゃないかと一般的にも思われていますが、最初はもう軍事的に自衛も含めて日本には交戦権を認めないという、そういう規定をしたわけです。しかし最終的に出来るまでに、占領軍の中の別のグループが、いやそれはあまりにも国際的に非常識だろうということで、まあ侵略のための戦争は駄目だという、そういうふうに解釈に持っていったわけです。でも情報として憲法に交戦権はこれを認めないという条文がちゃんと残っているわけです。だから話がすごくややこしくなってきて、集団的自衛権といって、例えば日米安全保障条約がある。で、集団的に自分の国だけで対応できないんで、お互いに協力してやるという、当たり前のどこの国でも認められている権利なんですが、これも日本には無いという解釈でずっと来ているんです。しかし現実的にはそれで済みませんから、さっきのインド洋にイージス艦を派遣した時もそれで済みませんから、結局もう外国では何言っているんだ、何ごまかしを言っているんだというような訳のわからない理屈でずっと言い繕っているというのが続いているわけなんです。だから当たり前のことですが、吉田首相も自分が首相退任後は、あの軍事の問題、自衛のための戦争の問題、交戦権の問題、あれをごまかしていたのはやっぱり問題だったと自分でも回想して言っているんです。これはあるテレビの番組で言っているんですが、その部分はカットまでされているんです。その放送局が自らカットしたんですが。何故かというとその時代には、50年代の初めですが、まだそういうことを吉田首相がいったことを報道するだけでも、ものすごく反発があったということですね。世論的にも国会の中でも、そしてメディアの中でも。だから放送局自らがそこまで削除するという、まあそんな中でずっと憲法は頂いたもので、まあ宗教の経典みたいに絶対に手をつけてはいけないということをずっと続けてきたということなんですね。
聞き手 結局はこれをどうすればいいかということですよね。ちょっと時間もなくなってきたんですけれども。今、色々なところに弊害も出てきている。この憲法がこうだから、改正していないからこうなっているというのをどうすればいいんですか?
笹木 もうさっきお話しました手続き法をちゃんと決めるということだと思うんです。衆議院参議院の2/3で出来る。提案の条件は何人ぐらいなんだ。例えば衆議院参議院100人とか50人で出来る、もっと少なくてもいいかもしれませんが。過半数はまあ常識的に考えて投票した国民のうちの過半数であればこの憲法改正が出来ると。具体的な手続きを作ることだと思います。で、そういうことでまあ例えば選挙に向けても、憲法改正のポイントはこれだと。こういうこともやらないと経済の問題でもアジアと経済的な自由貿易地帯作るんだと。こういうことも含めてちゃんと憲法の中で、日本の貢献ということもはっきりと出していく、これをやっていくことが必要だなと思います。 |